コラム

【VRヒストリー】君はAppleのVR技術「QuickTime VR」を知っているか

こんにちわこんばんわ。

VR!VR!とやたらVRのことを書きまくっている弊社ブログではございますが、VRと言いましてもいろいろなものがございまして。

今でこそ、360度VRは映像や3DCG、はたまたリアルタイム配信の世界へ突入していますが、ちょいと前(といっても4年くらい前)に

うお! iPhoneで簡単にパノラマ写真が撮れるじゃん! すげー!

っておもわず叫んだのもいい思い出です。こんなやつね。

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今じゃ360度パノラマも撮れるし。スゲーな。

さて。

今では個人がスマホで簡単にパノラマ写真を撮れる時代になりましたが、今から遡ること20年以上も前に、iPhoneでおなじみのアップルが、写真をパソコンでつなぎ合わせることでパノラマ画像の生成はもちろんのこと、現在の360度VR写真のようにウェブサイト上で全景写真を閲覧できる技術を開発していたのは、皆さんご存知ですか?

ちょっと前にGIGAZINEさんで記事にもなっていましたので、ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんね。その名も……

QuickTime VR(1994年~2009年)

今から22年前の1994年、アップルは1991年に発表したマルチメディア技術「QuickTime」における新開発技術として「QuickTime VR」を発表しました。(リンクは英語版Wikipediaの記事)

当時のアップルは、インターネット黎明期、かつWindows 3.1を擁するマイクロソフトとのし烈なOS戦争の真っただ中。前年の1993年には「早すぎた手の平デバイス」とも言われたNewton MessagePadを発表し、パソコンを中心とした新進のIT市場において「ガンガンいこうぜ」の姿勢を貫いていました。

ニュートン。早すぎたよなー。

当時、筆者である私はまさにアップルの一体型デスクトップパソコン「LC 575」を手に入れたばっかりの大学生でした。電話回線を通じ、モデム+ダイアルアップでインターネットにつないでいた時代です。光はおろか、ADSLすらありませんでした。

回線速度がヤバい。28.8kbpsですよ。スマホの4G回線速度と比較すると1/1000以下。動画をダウンロードするなんて、遅すぎて+データが重すぎちゃってもう、夢のまた夢じゃんそれ……のような時期です。

もう一つ昔話をすると、当時はまだ「デジカメ」が全く普及していませんでした。同じ1994年にカシオがQV-10というデジカメを発表しまして、これが結果として日本で初めてヒットしたデジカメになるのですが、とにかくそんな時代です。画素数が「25万画素」でした。今の1/100! わー!

そんな中、アップルがさらに「攻めた」んですね。まだデジカメすら満足に出回っていない時期に「画像をつなぎ合わせてパノラマ写真にして、全景を簡単に見渡せるようにしました!」とかやってるわけです。

念願のMacintoshを手に入れて浮かれていた青二才の私にとって、この発表は「異次元」でした。

1回聞いただけでは全然呑み込めなくって、専門雑誌の詳細な紹介記事でやっとおぼろげながら理解してやっと「アップルってスゲー!」と驚嘆するって感じ。

私が当時驚愕した、アップルの「QuickTime VR」プレゼン映像がYouTubeに上がっています。

1995年の「WWDC」におけるプレゼンテーションの模様。WWDCは今だとiPhone新作の発表とかを行っている、アップル主催のイベントですね。

当時は「驚愕」の機能を有していたQuickTime VR

QuickTime VRは、複数の画像をシームレスにつなぎ合わせてパノラマ写真の状態にすることができ、さらに今では当たり前になった「360度パノラマ写真」の画像データの生成を可能にしました。

またQuickTimeをベースにした技術を活用し、別途プラグインを使用することで、ウェブサイトにてパノラマ写真を現在の360度VRのように表示する機能も実装していました。

実際にWikipedia(英語版)には、QuickTime VRを使用して作成されたパノラマ画像が投稿されています(リンクをクリックすると表示されます)。

日本でも一部のユーザーが好んで採用しており、現在もQuickTime VRを使用したパノラマ写真がたくさん公開されていますので、ご興味があればぜひ。

2009年、QuickTime VRは「QuickTime X」発表と共にサポート終了→消滅

しかし、この技術は今のアップル、つまりiPhoneや、今現在水面下で開発されていると噂のAR・VR技術には生かされなかったのです。

2009年、アップルはQuickTimeの後継として発表した「QuickTime X」の発表をもってQuickTime VRのサポートを終了。終了までの数年間はアップル側からのアプローチもほとんど見られませんでした。結果として、アップルにおけるパノラマ画像への再アプローチは、iPhoneにおけるiOS 6の新機能としての「パノラマ撮影」までその時を待つことになります(2012年)。

また、大本となったQuickTime自体も、今年Windowsにおけるサポートを終了したのが記憶に新しいところです。さみしい……。

2016年12月の時点で、アップルは「それらしき特許」(Forbes Japan)や「ティム・クックさんの談話」(米ABCニュース)レベルで存在をほのめかすものの、「社を挙げてのVR・AR事業」について具体的な言及をしていません。

現在の競争相手であるGoogleが「DayDream」、Microsoftも「HoloLens」で「攻める」中、アップルはどんなカードを切ってくるのでしょうか。

そのときは、QucikTime VRのことを思い出しながら感慨に浸ろうっと。なんてことをコッソリと思う私なのでした。

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