VRSionUp! #1へ行って、世界に挑戦する情熱と「アバター・ボイスチェンジ研究」の最前線を感じてきました!

2019年一発目の取材は、こちらでございます!

GREE VR Studio Labは11日、VRに関する研究をベースにしたワークショップ「VRSionUp! #1」を開催しました。

今回VRonはこちらのワークショップにお邪魔させていただきました。ガッツリと取材してまいりましたので、当日のツイートと共にお届けしていきましょうー!

VRSionUp! #1 高校生VRを国際会議へ/VRChatを科学の研究に/ボイスチェンジャ探求 レポート

「VRSionUp!」(ヴァージョンアップ!)は GREE VR Studio Labによる「VRを通したイノベーションの発掘」をテーマにしたVR研究系ワークショップです。

GREEの「しらいはかせ」こと白井暁彦さん (GREE VR Studio Lab Director)が主催されていまして、今回は「#0」に続いて2回目。

GREE VR Studio Labは「VTuber関連技術のR&D促進」「異業種R&D連携強化」「業界振興・イノベーション型人材の支援発掘や育成」の3つを推進する先端研究組織です。白井さんはディレクターとして様々な形での活動を行われています。最近では昨年開催開催された「SIGGRAPH Asia 2018」の最終プログラム「REAL TIME LIVE!」にて……

「REALITY」を発表をされていたのが記憶に新しいところですね!

今回のワークショップは開催が発表される否や参加申し込みが殺到、早い段階で満員になり、急遽追加枠が設けられておりました。またVRChatからの参加枠が設けられたのも大きな特徴です。

「高校生VRを国際会議へ」……立教池袋中学校・高等学校「ARCO」

受付を済ませて会場に入りますと白井さんから笑顔でお迎えいただきました。そして「では、さっそくARCOの体験を!」とおもむろに始まったのが、立教池袋中学校・高等学校の皆さんによる「ARCO」(Avoid the Risks of CO)の実演です。

ARCO-Avoid the Risks of CO-
立教池袋中学校・高等学校 数理研究部

「ARCO」(Avoid the Risks of CO)は、「見えない恐怖を体験する」というテーマで作られたVR作品。火災発生時の事故として見落とされがちな「一酸化炭素中毒」に着目し、UE4で制作されたVR空間で「見えない恐怖・危険」を表現すべく、以下の2つの装置を自作されています。その一つが……

こちらの「TATAMI 360」。「あれ!? 何か見たことのあるフォルムじゃない?」と思った貴方! 鋭い!

アメリカの歩行型VRデバイス「VIRTUIX OMNI」に似てますね!

彼ら立教池袋の皆さんがすごいのは、このような「自立歩行+無限歩行が可能なVRデバイス」を自作しちゃった、ってことなんですよ!(鼻息荒く) こちらは昨年の「IVRC 2018」へエントリーされた際の紹介動画。こちらをご覧いただけると、具体的な内容がおわかりいただけるかと。

自作した「歩行感知デバイス」は、畳の上をスリッパで滑るように歩くと、その方向へHMDの視界が移動するしくみになっています。畳の下には磁気を応用した感知センサーが16個仕込まれていて、靴下を組み合わせて滑りやすくしたスリッパの向きや感覚を感知する、というロコモーションデバイスです。

このような歩行デバイスを商業ベースで購入すると非常に高価になってしまいますが、「古典的な日本にある素材を使っても(デバイスを)再現が可能ではないか」と考え、デバイスの自作にチャレンジしたそうです。

もう一つは、体験者の呼吸を感知する「呼吸感知マスク」、Windows MRのHMDに呼吸センサー(右の赤い部品)を取り付け、着用している人の呼吸を感知しフィードバックするようになっているんですね。

プレゼンテーションにて特に印象的だったのは、上のスライド!

三澤(立教池袋中学校・高等学校・高2)「僕らがこのコンテンツにかける思いというか提案として、「VRゲームにおいて手持ちのコントローラーなんていらないんじゃないか」と思っているんですね。

コントローラを持ってHMDをかぶるという作業そのものが、どうしてもコンテンツに対する没入感を損なうのではないか、と考えたんです。そこで、今回ハンドルコントローラを使わないデバイスを考えました」

それが、あの「TATAMI 360」へと繋がっているんですねー。いやー、感心しました!

また、HMDについている呼吸センサーで体験者が吐き出す吸気を検出しているのですが、コンテンツ内はこの吸気フィードバックを活用した上で、「VRコンテンツ内でわざとVR酔いを誘発させるようにすることで、一酸化炭素中毒の症状を擬似的に表現する」という設計を行っているんですね! これには膝を打ちました!!

この「ARCO」、昨年のDCEXPO 2018で開催されました「IVRC 2018」でユース部門・金賞(第1位)、GREE賞、メルカリ賞を受賞しておりまして、そのポテンシャルは折り紙付きです。更に現在、フランスで開催されます世界最大のVRフェスティバル『Laval Virtual』へ研究発表を投稿(もちろん英語!)、今まさに審査結果待ちの状態だそうです。すごーい!

顧問の先生とお話させていただきましたが「無事に採択されたら、今の鉄製の筐体をアルミに変えよう、と生徒と考えています。でないと飛行機に積めないですからね(笑)」とのこと。ぜひ通ってほしいですね!

「VRChatを科学の研究に!」

続いて「VRChatを科学の研究に!」の発表に移ります。

昨今「VRChat」で行われている「アバターを通じた交流」。 このアバターに関する既存研究、特に心理学的なアプローチは世界で研究されているそう。近年では自己の身体をアバタへと同一化する感覚を示す「Sense of Embodiment (SoE)」が報告されているとのことで、この分野の研究を中心とした紹介です。

当日VRchat上にて本分野の研究者でもあるリリス=リリーホワイトさんが発表される予定でしたが、残念ながら急病により欠席。代わりに共同研究者の小柳陽光さんと、白井さんのお二人による発表が行われました。

セッション内にて紹介されたのが、VR空間において「ほかのキャラクタとの交流を行う実験」。実験を通じて注目されているのが「アバターの形状によって反応や感覚が変わるのではないか?」というところ。このへんについては世界中で競い合うように研究が行われているそう。今後具体的な実験を進めていきたい、とのことです!

 「ボイスチェンジャ探求」

そして、3つ目に発表されたのが「ボイスチェンジ研究」!

今回会場では、VTuber「猫田あゆむ」さんのプロデューサーを担当されている小池健輔さん(小池デザイン研究所)による、ボイスチェンジャー技術の実演が行われていました。使われている機材は以下の通り。

  • マイク RODE NT-2
  • プリアンプ BEHRINGER MIC100
  • イコライザ DBX 131s
  • エキサイター APHEX EXCITER
  • ボコーダー ROLAND VT-4
  • インターフェース TASCAM US-42

実際に体験させていただいたのですが、自分の声が女性の声にしか聞こえなくなるんですよ! すごーい! これまでにも「恋声」などのアプリケーションはリリースされていましたが、特にROLANDの「VT-4」の発売によりボイスチェンジャーの機材状況が急速に整備されつつあるなあ、というのをすごく感じました!

また、当日はゲストとして「バ美肉+ボイスチェンジャー」の世界で有名な魔王マグロナさんが登場! さらに……

小池さんがプロデュースされているVTuber「猫田あゆむ」さん御本人が登壇されまして、白井さんと一緒にボイスチェンジャー技術に関する紹介が行われました。

猫田さんが発表されましたプレゼンテーションのスライドは以下からご覧いただけますよ!

http://bit.ly/VRSIONUP1-Nekota

さらに、猫田さんが今回の発表に関する動画を公開されておりますので、こちらもぜひ!

猫田さんの発表はかなり突っ込んだ内容になっておりまして、使用する機材に関することだけでなく、「自分の望む声に近づけるためのノウハウ」や「人間の声はどのようにして「鳴っている」のか」といったメカニズムにまで話が及びました。

高い声を出すのに喉仏を潰す必要はない、喉をコントロールする力をつけることが肝要」! これは……。奥が深い……!

「ボイスチェンジャ研究をサーベイしてみた」

また白井さんからは、ボイスチェンジャーに関する研究が今現在どのような形で各所で行われているのか、また各研究機関による事例などを紹介するプレゼンテーションが行われました。

東北大学さんの「名探偵コナンに出てくる蝶ネクタイ型変声機が作れるかも!」とか、ボイスチェンジ研究の最先端って、すごいところまで来てるんですね!

白井さんがプレゼンテーションにて使用されましたスライドはこちらからどうぞ。本紹介の詳しい内容が書かれていますよ!

http://bit.ly/VRSIONUP1-Shirai

あっと言う間の「楽しくて」「濃い」2時間! 次回は3月1日開催予定

こんな感じで一つ一つが「濃い」発表が立て続けにハイスピードで行われること2時間あまり、あっという間に時間が過ぎていったのでありました。いやー、濃かったなー!

当日の模様はYouTubeにて公開されています。以下のURLからどうぞ!

ワークショップを通じて感じたのは、とにかく「フランク」! アカデミックなワークショップっていうとけっこうお固い雰囲気を想定しがちですが、ひたすら会場の雰囲気が和やかだったんですよ!

参加されている皆さん一人一人がすごく情熱をお持ちの方ばかりでしたし、主催されている白井さんが縦横無尽に動きつつ一人ひとりに話かけながら、熱心に未来を語る姿が、とっても眩しく写りました。とにかく楽しいワークショップでした!

次回は3月1日の開催を予定されているとのことです。内容など詳しい情報は以下のURLをチェック!

CONNPASS / グリー株式会社 https://gree.connpass.com/

もちろんVRonも参加させて頂く予定です。次回もお楽しみにー!

取材協力:GREE VR Studio Lab

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