岐阜県にあります大学院大学、情報科学芸術大学院大学[IAMAS]が2月21日から24日までの日程で開催しました、第17期生による修了研究発表会および2018年度のプロジェクト研究発表会「IAMAS 2019」。今回から各研究発表・展示についてご紹介してまいりましょう。前回の現地レポートはこちらをどうぞ!
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情報科学芸術大学院大学「IAMAS 2019」へ行って、メディアアートの可能性を体感してきました!(1・現地レポート)
行ってまいりましたー! 岐阜県にあります大学院大学、情報科学芸術大学院大学[IAMAS]は2月21日から24日までの日程 ...
飯島 祥「LiveLoop Interpreter」
まずは、第17期生修了研究発表者の一人、飯島祥さんの「LiveLoop Interpreter」。
「LiveLoop Interpreter」は、ループペダルを用いたギター演奏における演奏動画撮影の際に、拡張現実(AR)を加えることができるツールです。
まずは「ループペダル」の説明から。ループペダルとは、エレキギターなどの楽器で奏でられた音を「ペダルを踏む」ことで録音することでき、さらにその音をループ再生させた上で別の音を重ねて録音する……などの機能を持ったペダル状のツールです。
このループペダルを駆使することで、例えばギター一本でその場で多重録音しながら演奏を行うことが可能になります。このループペダルをよく使うアーティストに「エド・シーラン」がいますね。
飯島さんは、このループペダルの仕組みを知らない観客にとって、そこで何が起きているのかを把握することが難しい、ということに着目します。そこでARを通じて、ループペダルにおける「パターン化された音型の反復」と、「リアルタイムで個人の演奏を重ねていく多重録音」という情報を視覚的に伝達させ、かつその際に、ループペダルを操作する動きが映像の変化との対応関係を持つようにするようにしました。それがこの「LiveLoop Interpreter」です。
実際にARを使って演奏が重なっていく様を映像化したものが展示されていました。筆者も拝聴しましたが、なるほど! 確かにギターの音が重なっていく感じがARによる映像情報として視覚化されることで、よりわかりやすくなりますね!
IAMAS2019も残り2時間!
シフトや手伝いで自分のブースにいる時間が絶望的に短いですが💦、ブースにいる時はこんな感じでループペダルを使ったデモやってます🎸今回の展示に向けて、足元の操作がより分かりやすく見えるようにARをアップデートしました😃#IAMAS2019 pic.twitter.com/26gQqOz30A
— sho iijima (@shoiijima) February 24, 2019
実際に演奏している様子を見ていただくのが一番早い! ということで、飯島さんがツイートされていた映像をご紹介しましょう。
飯島さんはこの展示を通して、「観客が、演奏者の身体を通じたアイデンティティの主張に対する解釈を深めるための、新しい演奏の配信スタイルを提案する」としています。ループペダルによる多重音声再生の「視覚化」が見事に表現されていて、とっても素晴らしかったです!
小寺 諒「或る脈動の部屋」
続いてご紹介するのは、同じく第17期生修了研究発表者である小寺 諒さんの「或る脈動の部屋」です。
メイン会場を入って右奥に展示されていた、だいたい2.5m四方くらいの空間。入り口の前には……
心臓の鼓動がレントゲン撮影されているような映像が流されていました。ふとこの映像の左にある入口を見ると……
心臓の鼓動に併せて、四角い空間の中にあるライトが同期して、明るくなったり暗くなったりしているのがわかります。
室内に入ると、そこには天井から吊るされたライト、一眼レフカメラ、そして、2台のターンテーブル。
上記2つの写真はどれもライトが点いた時(=心臓の鼓動がしている瞬間)に撮影したもの。心臓の鼓動とライトの明滅の同期に併せるようにしてターンテーブルが少しだけ周り、「ギュイッ」とスクラッチのような音を奏でます。また、同時に一眼レフカメラのシャッターが切られ、この空間にある全てのものが、心臓の鼓動と一緒に駆動する仕組みになっていました。
小寺さんは「家電製品をはじめとする多種多様な機械を、あらかじめ記録・編集された鼓動に従って動作させ、1つの部屋を生き物のような擬似的な身体空間に見立て、構築した作品である。複数の機械が構成する1つのシステムが観客を取り囲み、身体とテクノロジーの在り方を問いかける」、との言葉を公式サイトにてこのインスタレーションに寄せています。
確かに、空間の中にある全てのマテリアルが「心臓の鼓動」に全て支配されているような感覚を覚えました。心臓の鼓動が時間の経過と共に早くなったり遅くなったりしていく中で、鼓動の「音」とレコード盤が刹那的にかき鳴らす「ノイズ」、そしてカメラが響かせるシャッター音へとだんだん集中させられていくような、そんな奇妙な感覚です。
私達はもはや文明の利器がなければ行きてゆけません。でも、その文明の利器を作っているのは我々人間自身であり、その人間である我々を動かしているのは心の臓、いわばこの空間に響き渡る「鼓動」であります。この奇妙な輪廻というか、そんな循環的な世界に組み込まれていく自分自身をターンテーブルを見つめながら感じたのが、非常に印象的でした。
次回も引き続き展示をご紹介していきます。お楽しみにー!
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情報科学芸術大学院大学「IAMAS 2019」へ行って、メディアアートの可能性を体感してきました!(3・作品紹介その2)
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取材協力:情報科学芸術大学院大学 IAMAS事務局