VRSionUp! #3へ行って、「世界で最も高いモーションキャプチャ」と「VTuber初のシチュエーションコメディTVドラマ」の真価を確かめてきました!

その日。筆者は六本木ヒルズにおりました!(3回目)

4月12日、GREE VR Studio LabはVRに関する研究をベースにしたワークショップ「VRSionUp! #3」を開催しました。

VRSionUp! #2へ行って、Laval Virtualに挑戦する学生のチカラと「Vケット2」の真の魅力に触れてきました!

その日。筆者は六本木ヒルズにおりました! 3月1日、GREE VR Studio LabはVRに関する研究をベースにした ...

前回に引き続き、VRonはこちらのワークショップにお邪魔させていただきました。しかも、今回はいつもより早めのご入場! その訳は……。今回は一段と長くなっておりますので、じっくりとお楽しみくださいませ!

なお、当日の模様はイクスアール株式会社さん協力のもと、YouTube Liveで配信されましたので、以下のアーカイブ動画と当日使用されました資料をご覧頂きながらどうぞ!

(2019/4/12) VRSionUp! #3
https://www.youtube.com/watch?v=u23h46mkvlE

VRSionUp! #3 資料(Google プレゼンテーション)
http://j.mp/VRSIONUP3

「VRSionUp! #3」現地レポート

実は! このときのツイートの前に、私共VRonはグリーさんのご厚意で「REALITY Studio Roppongi Hills(仮) 見学会」へひと足お先にお邪魔させていただいたのでした!

「REALITY Studio Roppongi Hills(仮) 見学会」

今回新たに公開されたのが、六本木ヒルズ12Fにありますグリーさんの一角にて構築中の「 REALITY Studio Roppongi Hills(仮)」。公開されたのは2種類のシステムでございました。

まずはHTC Vive TrackerとIKINEMA Orion & LiveActionの組み合わせでキャプチャーを行うシステム。

アバターを操作する人には8つのVive Trackerが設置されています。頭、両肘、両手甲、両足甲と……

腰の8箇所に設置されている状態ですね。「8点トラッキングになります。膝以外の主要な関節部分をトラッキングしている状態ですね」とのこと。

昨年のSIGGRAPH Asia 2018で開催された「REAL TIME LIVE!」にて、白井さんが文字通り体を張ってデモンストレーションをされた際に使われたシステムがこちらなんですね!(SIGSRAPH Asia 2018の際はXsensとStretchSensグローブも使用)

フェイストラッキングは前方のスマホ(iPhone)で行っています。こちらのシステムはDJ RIOさんが社長をお務めなことでご存知! 株式会社WFLE(Wright Flyer Live Entertainment)ソリューション事業部にて展開されているとのことです!

続いて白井さんからご紹介を受けたのが……

うおおおおお! こ、こ、これはまさか、頭上にズラッと並んでいるやつ……、バ、バ、「Vicon」じゃないですかーーーー!!

しかもこれ、たしか「Vero」シリーズですよね! ていうか、部屋中に相当な数の「Vero」カメラが並んでるんですけどーーーー!!

機材周りを担当されているのはVicon社製品を広く取り扱っているクレッセントさん。あの「バーチャルさんはみている」にも技術協力をされていたことで知られていますね。担当の方によると、Veroの「v1.3x」が合計14台設置されているそうです。

Viconと言えば、ハイクオリティな光学式モーションキャプチャーシステムの定番。飛んだり跳ねたりするような高速な動きにも追随できるのが大きな強みです。さらに、使われているソフトウェア「SHOGUN LIVE」により、ブラインド状態になっている体のマーカー(ウェアに点いている「ツブツブ」のようなもの。53個のマーカーがついています)を補完してトラッキングができる、という優れたキャプチャー技術を実現しています。

現在こちらのシステム群は評価中とのこと。さすがは白井さんが 「世界で最も高価な土地にできたリアルタイムモーションキャプチャスタジオ」と豪語されるだけあります! グリーさんとしてはVTuber・ヴァーチャルアバター関連だけでなく、ゲーム開発における3Dアニメーションなどへのモーションキャプチャーなどにも活用をしていきたいとのことです。

ちょうど今回のVRSionUp #3は「REALITY Festival 2 >DIVE」が開催の真っ最中でした(すごかったですねー!)。ゴールデンウィーク中の再放送も決定しましたので、ぜひぜひチェックを!

白井さんはメディアでの囲み取材でこの「REALITY Festival 2 >DIVE」についても触れていらっしゃいまして、

白井 「ただいま開催している「REALITY Festival 2 >DIVE」、今夜はREALITY Avatarを通じて配信を頑張ってきた個人の方たちが公式番組に出演するんですよ(『踊っていいとも!!』天使リリエル-Amatsuka-/大都つくし/瀬戸乃とと)。これは非常にすごくエポックメイキングなことです。REALITY一般配信者でトップクラスの人は1週間程度のコンテストで数十万ポイントを獲得したりします。こういう世界になると、まさに「なりたい自分で生きていく」みたいなことが現実になりつつある、ということを感じますね。

(YouTuberよりもさらに敷居が低い、ということですか? との問いに対し)

白井 「そうですね。VTuber、という意味で言えば、例えば「スマホひとつ」でできる、というのが地続きであること、それに将来的にYouTubeやTwitterでの活動にも繋げられる、という点(がそう)ですね。そのためにも我々はコミュニティの醸成に力を入れていますので、多くの配信者にとって「REALITYが良い!」「REALITYに住みたい!」と言っていただけることはとてもありがたいなあ、と感じています」

いやあ……、すばらしいものを拝見させていただきました……! これは凄いですね……。初っ端からこの凄さですもの、この後が楽しみで楽しみで仕方ありませんね!

特別ゲストトーク:バーチャルYouTuberドラマ『四月一日さん家の』誕生秘話~色々あって、ここまで来ました。

さあて、いよいよ今回の1番の目玉! 特別ゲストトークのスタートです!

今回は史上初・テレビ東京が満を持して送る、バーチャルYouTuberたちによるシチュエーションコメディ「ドラマ25「四月一日(わたぬき)さん家の」」の放映開始(4月19日(金) 深夜0時52分)にさきがけまして……

 

五箇公貴さん(テレビ東京)、赤津慧さん(株式会社ハロー)のお二人をお招きして、本企画の成り立ちから完成までの色々な話を聞いちゃおう! という超贅沢な企画です。

「テレビ東京が満を持して送る、バーチャルYouTuberたちのシチュエーションコメディ」と題してテレビ東京系列にて放映が始まりますのがこちら『四月一日さん家の』。プレスリリースなどでも徹底されている一番大きな特徴が、この番組が「アニメ」ではなく「シチュエーションコメディドラマ」と紹介されている点にあります。そう、あくまでこれは「ドラマ」。大事なところですよ!

詳細は実際の配信動画ですべて語られています。今回グリーさんにてゲストトークのダイジェスト版動画が公開されましたので、ぜひこちらを御覧くださいませ!

#VRSionUp!#3 特別ゲストトーク(ダイジェスト版):バーチャルYouTuberドラマ『四月一日さん家の』誕生秘話~色々あって、ここまで来ました。
https://www.youtube.com/watch?v=THLzW_5XMhs

VRonではその中から冒頭の部分をかいつまんでご紹介してまいりましょう。……、とその前に。

そう。「中の人などいない」のです! それでは、いざ。

「念頭にあったのは『やっぱり猫が好き』」

五箇 「これから30分1クール(12話)のドラマが始まるわけですが、これを(自分たちが)作ったのか、と思うと……ホンットに吐きそうになりますよね(会場爆笑)」

赤津 「本当にそうですよね(笑) 長い道のりでした……ようやく放送か、と(苦笑)」

五箇 「去年の夏前ぐらいから赤津さんとこういうことをやろうと始めたんですが、なんだかんだ言って……」

赤津 「10ヶ月くらいかかりましたね。それが大体の製作期間です」

五箇 「そもそもは雑談から始まりました。今回企画・構成で入っている酒井さん(酒井健作さん)がたまたま「サイキ道」(テレビ朝日、MC:電脳少女シロ)で構成をやっていて、「VTuberでなにかできたら面白いよね、ドラマとかできないかな」と二人で話したのがきっかけです。

「VTuberって、アニメとも実写とも違う、なんというか……言い方が難しいんですけど、3Dの姿をした「本人」が「本人」として存在する、しかもそういったVTuberが(当時)5,000「体」もいる、というのが非常にエポックメイキングで、それだけいるのであれば役者の層も厚いのではないか、だったらVTuberを主役とした新しいエンターテイメントができるのではないか、と考えたのが一番最初の企画のタネでした。

「で、自分は通常ドラマの枠をやっているので、「『ドラマ』というスキームでやってみるというのは、この企画が通せる近道なのではないか」と考えまして、会社に提案したんですね。そうしたら、その時当時会社の偉い人たちがちょうど「VTuber」とか「e-sports」といった言葉を耳にしていて。

「「こんなVTuberの企画思いついたんですけど」ってこの企画をかるーく出したら、「すぐやれ!」みたいな話になって、「やっぱりテレ東ってザクっとしてんなー」って(会場笑)。そんな感じで自分が深夜の枠でやることになったんですね。ただ、僕自身はVTuberに興味はあったんですけど、ずっと実写畑にいて技術的なことがわからなかったので、そこで赤津さんに相談をした、というのが一番最初です」

赤津 「そうですね。弊社ではVTuberの「響木アオ」を運営しておりまして……」

響木アオ(株式会社ハロー / エイベックス)

赤津 「当時(去年の6月頃)って、VTuberがTV番組を持つってことはあまりなかったんですね。基本YouTubeベースの活動がほとんどでしたので、次の表現方法というか、次の(響木アオの)映像作品としてなにかストーリーのあるお話をを作りたいなーというのをザックリと考えていた時期で、そのタイミングでまさに五箇さんからドラマのお話を頂いて「これはやるしかないな」と。期間とか条件とかを聞く前に「とりあえず作りましょう!」という話をしてました」

五箇 「それを聞いて、『こんな地獄が待っていようとは……』と思ったに違いないって感じなんですけどね(笑)」

五箇 「何をやるか、というところでVTuberの特性として「一人称で誰かにライブに話しかける」というものがあったりしますから、まず一つの空間というものを大事にしたい、と考えました。

で、その上で通常のドラマのように外に出て背景を作り込んでロケして……ってやっていってしまうと、結局フルCGアニメーションと変わらなくなってしまうので、(VTuberの持つ)ライブ感だったりを活かせる方法として考えたのが、「シチュエーションコメディ」……これ、四十代ぐらいの方は知ってると思うんですけど、やっぱり猫が好き』っていう……(会場感嘆・リンク先はWikipedia)。恩田三姉妹ですね。

白井 「『やっぱり猫が好き』か……!」

https://www.youtube.com/watch?v=HAwMRi91qbI&list=PLlbWYhtcv35kbGblGRcdN38KGzjiCh46C

五箇 「『やっぱり猫が好き』が2019年になったら、出演者全員がバーチャルだった、っていう(笑)。演者がバーチャルだった、っていうのが面白いな、と思いまして。『やっぱり猫が好き』は僕自身すごく影響を受けた作品です」

赤津 「正直、僕は最初ピンときてなかったんですけど(会場爆笑)、その後すぐに調べまして(笑)」

五箇 「あとは『フルハウス』とかもそうですね。一つのシチュエーションで、何人かが同じ空間で暮らして物語を作る、というのが一番近くて、コスト的にも向いているんじゃないか、と思ったんです」

赤津 「6月に構想を始めて(翌年の)4月に放送、というのは3DモデリングやCGを作るということを考えると非常にタイトなスケジュールだと思うんですよね。この限られた期間の中で何をやるのかというのをすり合わせながら、ドラマとしての面白さと、VTuberとしての哲学というものをどうやって融和させていくのか、ということを話し合った結果「シチュエーションコメディ」に行き着いた、という感じはしました」

五箇 「あと、(VTuberというものが)すごく新しいものだ、と思った反面「(VTuberというものが)他を寄せ付けないようなところもあるな」というところを感じたんです。

VTuber自体はすごく面白いし、可能性もあるし、エンターテイメントとしてもっと広がってほしいな、と思ったときに、一般の、特にアニメとかにも興味がないような人にも「ドラマ」という文脈なら受け入れられる可能性があるんじゃないか、ということもあって、普遍的なコメディスタイルというのを「とっつきやすい」という意味で選択した、ということもありましたね」

テレ東は「VTuberの方々がより活躍できる場」を作っていきたい

 

実は、上の文字起こしだけでもう3000文字近いのですが、これでも実際の時間はわずか「15分」くらいなんです! それほどなまでに内容がパンッパンに濃かった……! 深ーいお話の連続でした。

ここからは白井さんの「中の人などいない!」的な観点が重要になってくる部分も交えて、興味深いお話が続いていきます。このまま文字に起こすことで抜け落ちてしまう観点や見方が出てくることもありますので……、あえて文字起こしをせずに実際の動画をぜひご覧頂くことを強くオススメいたします! もう一度動画のURLを。

(2019/4/12) VRSionUp! #3
https://www.youtube.com/watch?v=u23h46mkvlE (左のリンクは頭出し済:上記文字起こしの最後から、1:10:59あたり)

筆者的に感銘を受けたポイントを箇条書きでまとめますと……

  • 特別に第1話の冒頭が公開されたが、ドラマ内には「ガヤ」(バラエティ番組でよくある『笑い声』のSE)の音が入っている! シチュエーションコメディを地で行く演出とこだわり。しかしてその理由は、VTuberが人間と違い「表情のバリエーションが(3Dモデルとしての仕様上)限定される」という条件を踏まえた演出だった
  • スタイリストの伊賀大介さんがコーディネートした実在の衣装をまず2D化して、そこから3Dモデリングを起こしている。テレビでは禁じ手(着る人が目の錯覚で太って見えてしまう)の「ボーダー柄」を抜擢するなど、思い切ったチャレンジも
  • 実写のスタッフとVRスタッフの間で話が通じない! 実写スタッフに「座標」や「バーチャルカメラ」という概念がそもそもない(「Slack」なんてものも当然ない)ことから、この間を取り持つプロセスが重要で、現場スタッフが手書きで大道具・小道具・セット配置を図面に起こし、それをVRスタッフ側がUnityに落とし込むといった「翻訳作業」が不可欠だった。
  • 最初は現場での衝突もあったりしたが、第2話あたりから「言語は違うけど、目指すところは一緒」という部分をきっかけにお互いが歩み寄りながら打ち解けていき、一体となったチームが醸成できた
  • 制作はアニメのような「絵コンテ」などは一切使わず、全てドラマの手法(マルチカメラを回して監督がモニターを見ながらディレクションを行う)で撮影が行われた。あくまでこの作品が「ドラマ」と表現される所以の一つ
  • ドラマ初主演の3人は役者として本当によく頑張ってくれた。初めてのドラマ出演、しかも3人だけという条件の中で彼女たちは台本を完璧に覚え、12話を演じきった。しかも、途中から「アドリブ」にも果敢にチャレンジしていた
  • エンドロールに「出演:四月一日一花……ときのそら」というテロップが出る、という事実のエモさといったら! VTuberはこのドラマにおいて「演者本人」なのである。「中の人などいない」のだ!
  • テレ東は「VTuberの方々がより活躍できる場」を作っていきたい」というメッセージに、胸熱!

最後の3ヶ月は「編集→モーションチェック→再撮影」の繰り返しだったとか。それほどなまでに短い期間の中で可能な限りのブラッシュアップをされていったことが伺えます。まさしくVTuberの歴史において確実に一石を投じる作品になるであろう本作、今からめちゃくちゃ楽しみです!!

ライトニングトーク

この後は毎回お馴染みのライトニングトークが行われました。今回登壇されましたのは……

古川さんの「TeleSight」が、Laval Virtualにて「ReVolution #Research Winner」を受賞されました! おめでとうございます!

これで古川さんのチームは今年の「SIGGRAPH 2019」「E-Tech」プログラムへの招待を獲得、IVRC(DCEXPO)、Laval Virtual、そしてSIGGRAPHと3つのメディアテック系カンファレンスイベントにて研究発表をされることになります。白井さんが「グランドスラムですね!」と讃えていらっしゃったのが印象的でした。

最後は白井さんによるSXSW、Laval Virtualの報告を中心としたライトニングトーク。この内容が、とにかく濃くて濃くて! こちらもぜひ白井さんのトークを映像でご覧頂きたいです。約30分ほどですが、あっという間に過ぎてしまいます。あんまりにも濃すぎて纏めきれません(汗)。ぜひ動画で! ぜひ!! 必聴です!!!

(2019/4/12) VRSionUp! #3
https://www.youtube.com/watch?v=u23h46mkvlE (左のリンクは頭出し済:2:54:47あたり)

次回の「VRSionUp! #4」は5月17日の開催が予定されています。テーマは「VRエンタメxEdu」ということで、いよいよ教育分野がテーマになりますね!

会場にはXR界隈を震撼とさせた、あの!「Nintendo Switch LABO: VR Kit」が置かれておりました。トーク終了後に白井さんが「開封の儀」を行うなど、会場の皆さんの関心も非常に高かったですねー。

後日、白井さんは立教池袋中高のみなさんと「VRKitハッカソン」を実施されまして、モーメントに纏められています。次回の「#4」ではこの「VRKitハッカソン」についても取り上げられる予定とのこと。今から楽しみですね!

もちろん、次回もVRonは取材でお邪魔させて頂く予定です。次回のレポートもお楽しみにー!

取材協力:GREE VR Studio Lab

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