10/24 ご指摘を頂き記事の一部を修正しました。ご指摘頂き誠にありがとうございました。
その時、筆者は秋葉原におりました!
10月20日、U-22プログラミング・コンテスト実行委員会は秋葉原コンベンションホールにて「U-22プログラミング・コンテスト 最終審査会」を開催し、各賞を決定しました。
「U-22プログラミング・コンテスト」は、自らのアイデアで新しい未来を拓く、次代のITエンジニアを対象としたコンテストです。国内の優れたIT人材の発掘・育成を目的として1980年から経済産業省の主催で開催が始まりました。2014年には民間開催へ移行。現在ではコンテスト主旨に賛同した民間の協賛企業に支えられ、今年の開催で通算40回目を迎えます。
今年は40周年を記念して、経済産業大臣賞の副賞が40万円に増額。さらに大臣賞受賞者には様々な特典を用意し、更なる成長を目指すための支援が複数用意されています。
この度VRonはメディアパートナーとして当日会場にて取材させて頂きました。会場内では協賛各社による展示はもちろんのこと……
お子様向けのプログラミング教室なども開催されておりました。こちらはKids Ventureさんによる「IchigoJam」を使ったマイコン組み立て→プログラミングまでを行うカリキュラム。使う言語は……
おおお! 懐かしい「BASIC」ですね! みなさん熱心にお勉強されていましたよー!
なお、当日の模様はニコニコ生放送で配信されました。タイムシフト視聴も可能になっておりますので、見逃した方は下のリンクからぜひどうぞ!
さて、今回全エントリー406作品のうち、最終審査へ進んだむ16作品は以下の通りです。
一次審査通過16作品一覧(受付番号/ジャンル/製作者またはチーム名/作品名/所属校)
- 002/ゲーム/O.M.T.Production/STEAM GEAR/日本工学院八王子専門学校
- 022/ゲーム/A.L.F.A.Company/コロボシ/日本工学院八王子専門学校
- 081/ゲーム/Rapture/HolodealCity/日本工学院八王子専門学校
- 082/その他/team01/Satellite Traveler/日本工学院八王子専門学校
- 085/ユーティリティ/河内 誠悟/糸かけ曼荼羅色シミュレーター/N高等学校
- 110/学習&教育/大門 巧/ブラウザ上で動作するDNCL処理系「Tetra」/東海大学
- 138/ゲーム/電子遊戯部/Security Arise of Knowledge (SAoK)/新潟コンピュータ専門学校
- 139/ユーティリティ/Toast&Fried egg/Cell Sheet/電気通信大学
- 260/ゲーム/瀬戸 徳/地下楼 The First Contact Demo/明治大学
- 269/ゲーム/布川 陸/とれつめ/東北大学
- 298/ゲーム/眞部 智也/LOCUS/ECCコンピュータ専門学校
- 313/学習&教育/冨田 晴生/Capture the Elements/Hope InternationalAcademy Okinawa
- 330/ゲーム/なまこラーメン/ボコセル/HAL大阪
- 420/その他/酒井 駿/FindYourBusDX/Greenwich High School
- 424/プログラミング言語/上原 直人/Blawn/開成中学校
- 485/ユーティリティ/鵜狩 慧久/mindPump/九州工業大学
どの作品もため息が出るような完成度の高さを誇るものばかり! 特にVRonが気になった作品を3つ、ご紹介しましょう!
424/プログラミング言語/上原 直人/Blawn/開成中学校
上原直人さんは開成中学校に通う15歳(!)。彼が開発したのは……プログラミング言語そのものです!
彼による「Blawn」は、静的型付けコンパイル型言語。型名の記述がジェネリックになっている(宣言・記述がいらない)ことが特徴で、メモリ安全性への配慮や、既存の言語や文化に囚われず、かつ実行速などの実用性などについても目を配り、「人間にとっての扱いやすさ」を目指した、としています。現在はLinux上で動作しているそうで、今後はブラウザでの動作や、コンパイルしたものがWindowsやMacなどで動作させるようにしたいそうです。
それまではPythonを使っていた上原さん、今年の夏にC++を使い始めたものの扱いにくさを感じ、独自言語の開発につながったそうでして、開発に使ったメインの言語もそのC++(補助としてPython)。つまり、C++を覚えてからこの「Blawn」の開発を始め、コンテスト本選までに間に合わせた、ということになります。その間、わずか2・3ヶ月……!
ご本人曰く、構想を7月から始め、開発を始めたのが8月頃からだったそう。予選では実装が間に合っていない中で見事通過し、今日までの数週間で大枠を完成させたそうです……!
485/ユーティリティ/鵜狩 慧久/mindPump/九州工業大学
こちらは九州工業大学の鵜狩慧久さんによる「マインドマップ自動生成ユーティリティ」。ブレインストーミングなどで多用される思考ツールの一つ「マインドマップ」を題材に採用しています。
マインドマップは画用紙や作成アプリなどを使い、自分でキーワードを枝葉上に拡張させていくことで思考やアイデアを整理していくのによく使われますが、このアプリでは、一つキーワードを入れるとシステムがそのキーワードに対応したキーワードをマインドマップ上に自動的に展開、提案する、というのが柱になります。GUIはマウスベースで設計されていて、マップの枝葉に対して肯定的、否定的な評価をマウスでの簡単な動作だけで与えることが出来、それに対してリアルタイムにマインドマップが呼応する、という仕組みです。
単語のベクトル化にはテキスト処理を行うニューラルネットワークである「word2vec」が使用されている他、表示のデザイン性にもかなりこだわったそう。「有機的な表示になるように心がけました」とのことです。今後はスマホアプリなどへの落とし込みを行い、普及を目指しつつ、ユーザー行動履歴などのデータをつかって単語提案の精度を上げていきたい、としています。
これ! 見た目もそうですが、非常に使いやすそうだな、と感じました。マインドマップってとにかくキーワードを数多く繰り出さないと意味のあるものになりませんが、そのキーワード生成を支援するだけでなく、力学的アプローチでどんどん体系化してくれるインターフェイスがよく出来ているなあ、という印象を受けましたねー。
139/ユーティリティ/Toast&Fried egg/Cell Sheet/電気通信大学
こちらは電気通信大学のチーム「Toast&Fried egg」によるマークシート生成+集計Webアプリ「Cell Sheet」。こちら、実はすでにWeb上で稼働しています! 執筆時点ではメンテナンス中になっておりましたので、こちらの紹介動画をどうぞ。
Webブラウザ上でマークシートの解答用紙を編集→PDFへ出力でき、さらに解答用紙をスマホのカメラをつかって(あるいはスキャンした画像を)OCR読み込みさせた上で画像解析を行い、得点配分や筆記解答欄部分の画像切り出し+採点機能までついている……という、めちゃくちゃ便利なWebアプリケーションに仕上がっております。集計結果のcsv形式出力機能などもある他、設計的にはスケールアウトもできるようになっているそうです。
サービスのベースはGoogleのFirebaseやDockerを使用、マークシートの画像解析はPythonで記述されておりOpenCV、Vue.jsなどを使用。四隅にQRコードを配置させることで、カメラ撮影時に影が写り込んでも認識できるほどの認識率を誇っています(プレゼンでは99.4%)。今後は画像アップロードAPIや解析結果取得APIなどの追加や、大規模処理や高速化を目指すためにC++などで開発を行うなど、より利便性を図りたいそうです。
その他にも、弱冠10歳! 冨田晴生さんが開発した、ゲームで遊びながら元素記号を学べる「Capture the Elements」や……
センター試験用手順記述標準言語(DNCL)をWebブラウザ上で処理できるWebアプリケーション「Tetra」などが印象に残りました!
結果発表! 栄えある経済産業大臣賞を受賞したのは……!
それでは、結果発表!
■受賞作品一覧
○経済産業大臣賞(経済産業省内表彰式(10月21日開催)にて表彰状の授与/副賞:40万円、トロフィー)
「総合」 Blawn 上原 直人/開成中学校
「プロダクト」LOCUS 眞部 智也/ECC コンピュータ専門学校
「テクノロジー」 ブラウザ上で動作するDNCL 処理系「Tetra」 大門 巧/東海大学
「アイデア」Capture the Elements 冨田 晴生/Hope International Academy Okinawa
○経済産業省商務情報政策局長賞(経済産業省内表彰式(10月21日開催)表彰状の授与/副賞:5万円)
「プロダクト」STEAM GEAR O.M.T.Production/日本工学院八王子専門学校
「プロダクト」 mindPump 鵜狩 慧久/九州工業大学
「テクノロジー」地下楼 The First Contact Demo 瀬戸 徳/明治大学
「テクノロジー」とれつめ 布川 陸/東北大学
「アイデア」Cell Sheet Toast&Fried egg/電気通信大学
「アイデア」Satellite Traveler team01/日本工学院八王子専門学校
○スポンサー企業賞/SOMPO 賞(副賞:Macbook + Fitbit)
mindPump 鵜狩 慧久/九州工業大学
○スポンサー企業賞/Boys and Girls, be ambitious! 賞(株式会社デジタルガレージ)(副賞:サンフランシスコ往復航空券(ペア))
Blawn 上原 直人/開成中学校
○スポンサー企業賞/サイボウズ賞(副賞:賞金10万円+ サイボウズおよびサイボウズ・ラボのエンジニアが執筆した技術書セット)
Blawn 上原 直人/開成中学校
○スポンサー企業賞/OBC 賞(副賞:Microsoft Surface Pro)
Rapture HolodealCity/日本工学院八王子専門学校
○スポンサー企業賞/さくらインターネット賞(副賞:Parrot ドローンセット(HD カメラ+FPV ゴーグル+コントローラー付き)/レッドブル120本)
Security Arise of Knowledge (SAoK) 電子遊戯部/新潟コンピュータ専門学校
○スポンサー企業賞/日本事務器賞(副賞:Levi's® Trucker Jacket with Jacquard™ by Google)
糸かけ曼荼羅色シミュレーター 河内 誠悟/N 高等学校
○スポンサー企業賞/PCA クラウド賞(副賞:最新版MacBook)
FindYourBusDX 酒井 駿/Greenwich High School
○スポンサー企業賞/フォーラムエイト賞(副賞:VR 開発プログラミングキット(ノートPC 1台・UC-win/Road, SDK, RAD Studio Professional, 統合型3DCGソフトShade3D Professional(いずれも1年間無償ライセンス)、図書カード 3万円、FORUM8デザインフェスティバル(2019/11/12-15)招待券)
ボコセル なまこラーメン/HAL 大阪
○スポンサー企業賞/豆蔵ホールディングス賞(副賞:賞金10万円)
コロボシ A.L.F.A.Company/日本工学院八王子専門学校
○Best Viewers 賞 (副賞:図書カード1 万円分)
Blawn 上原 直人/開成中学校
というわけで、終わってみれば開成中学校の上原直人さんが4冠を達成するという、圧巻の内容でございました。もちろん、他の作品もよりすぐりなものばかりで、ますます若い人たちの力を感じ取ることのできた1日になりました。
40回目という節目を迎え、「U-22プログラミング・コンテスト」はこれからも若き才能をプッシュアップしていく存在としてますますパワーアップされていくことと存じます。今回VRonは初めてメディアパートナーとしてお手伝いをさせていただきましたが、今後も「Youthのチカラ」を合言葉に、若人の飽くなき才能をどんどんお伝えしていければ幸いです。
出場された皆さん、本当にお疲れさまでした。皆さんの前途が明るいものであることを!
取材協力:U-22プログラミング・コンテスト実行委員会