VRonが協賛プログラムに参加させていただいております、GREE VR Studio Lab主催・VTuber技術を対象とした研究チャレンジコンテスト「VTech Challenge」。
「学生のみ」に限定されたコンテストで、エントリーは12月31日までとなっております。VRonでは先月から今月にかけまして総力取材を敢行し、年末スペシャル「VTech Challengeへの道」と題しまして本コンテスト、そして……
先月20日にオーストラリアで開催されましたSIGGRAPH ASIA 2019、その最終日に開催された「Real Time Live!」でのVTuberによるグローバルな双方向触覚ライブについて、ロングインタビューでお送りします!
今回はその1回目といたしまして、GREE VR Studio Labディレクター・白井暁彦さん(以降「しらいはかせ」)にインタビューをさせていただきました。本コンテストに対するしらいさんの思いや展望、そして攻略法(!?)をじっくりと伺いましたので、どうぞじっくりとお読みいただければ幸いです!
白井暁彦(「しらいはかせ」)
博士(工学) 東京工業大学 知能システム科学 2004年
専門はVRエンターテインメントシステム、触覚技術、GPU応用、多重化ディスプレイ技術、プレイヤー体験の物理評価、国際連携
日本VR学会 IVRC実行委員・審査委員,フランスLaval Virtual ReVolution チェア, デジタルハリウッド大学大学院 客員教授
著書「白井博士の未来のゲームデザイン-エンターテインメントシステムの科学」他
「VTuber技術ってそもそもなんだっけ?」っていうのを明らかにしていきたい
VRon 本日はよろしくお願いします!
しらい よろしくお願いします!
VRon まずは今回の「VTech Challenge」を行うきっかけと言いますか、意義というものについて教えていただけますか?
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GREE VR Studio Lab、VTuber技術を対象とした研究チャレンジコンテスト「 #VTechChallenge 」を開催
#VTechChallenge is officially released!グリーで最先端技術研究開発を担う「GREE ...
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しらい ポイントとしては3つあります。
まず、物作りそのものにどう挑んできたか?という経験が重要であるという事です。今の時代、エンタメやサービスを含めた「もの」を作っていく上で、「すでに出来上がったもの」の直感的なわかりやすさに対して、完成度がとても高いので、これを見てそこから経験がない人がゼロスタートするのってすごく難しいんです。
たとえばパッケージのゲームやYouTubeで観る動画を、「僕もこれを作りたい!」と思うことはあっても、素からこれを作り始め、こう作れば完成に至る…というプロセスを想像できる人はなかなかいません。でも、作ってみれば「複雑だな」とか「これは思ったより難しいな」とか「この部分は楽しいし深められるな」といったこともわかってきます。単純に「unity使える人」を集めるよりも、そういうもっと「タネの作り方に興味があってやってみた」、という人物にちゃんと注目したいなというのが、まず一点ですね。
それから、VRエンタメ、特にVTuberの分野は、「分業体制」が進んでるわけではないのです。例えばゲーム開発だったら、そのアーティストとかエンジニアだとかプロデューサーだとかプランナーみたいな役割があるわけですけど、それも歴史を振り返ると、産業がある程度習熟してきたからそう言えているのであって、現在求められるこの分野のエンジニアは、もしかしたらアーティストかもしれないし、プロデューサーかもしれない。こういう役割を「越境していく人」が明らかに重要だし、そういう方って「VTuber技術」って枠組みで脚光を当てていかないと、既存のロールモデルの中では微妙な評価になってしまうかもしれない。
絵専業で描いている人、エンジニア専業の人の方が時間とクオリティが高いものを作る、という成熟した分野だから分業しているのであって、現在のVTuber産業やアバター社会はまだまだ黎明期で「一人で作り出せるのであれば、別に一人で作ってもいいですよね」っていう要素も多々あります。一見成熟期に入っているようにも見えるVTuber産業ですが、「VTech Challenge」においては、そういった要素的な観点と、個人の能力の可能性についてもちゃんと見直しておきたいなという意図があり、個人参加型になっています。
3つ目として、「今後のVTuber技術ってそもそもなんだろう?」っていうのを明らかにしていきたいというのがあります。「明らかに」っていうのは別に悪い意味ではなくって、すごくフィールドが広がってるなってのが普通の人にも伝わればいいな、と思っていて。GREE VR Studio Labは、従来のコンシューマHMDとゲームエンジンが牽引するVRを「VR3.0」と呼び、人間を表現するVRやアバター社会が牽引するVRの時代を「VR4.0」と定義して、特に深く研究しています。
で、大事なのはそれをVTech Challengeでは「業界横断」でやりたいんです。グリーグループだけでやる、ということも可能だけれども、学生さんと同じく、もっといろんな企業さんや、もっといろんな要素技術を持っている人たちが、そこでその技術課題やシーズやニーズを出し合いながらこの取り組みをやっていく、っていうのが大事だと思っています。なのでVTech Challengeの協賛には本当に多様な企業さんに協賛いただいております。
しらい で、この「いろんな」という中には「大学の先生」も含まれています。
例えば僕自身はVRエンタテイメントを国内や海外の大学、科学館などで研究してきましたけど、コンピューターサイエンスや人間科学、もしくはコンテンツやアートで研究室を構えている先生方が、もしかしたらこの分野をちゃんと捉えていないかもしれない、という危惧があります。
それが例えば、学生さんが「VTuberを研究テーマにしたい」と言って卒業論文や卒業制作、卒業研究を提案していったときに、うまく言語化して伝えたり、上手な課題設定をできないのではないか。VTuberやアバター社会関連の研究は、誰もやったことが無い事に、ちゃんとタックルして行くってことができるテーマである可能性があります。しかも世界の中で、日本がリードできる研究分野です。
でその中で、今回「技術分野」というのを具体的に示していまして……
- キャラクター表現を向上させるリアルタイムCG技術
- スマートフォンやHMDへの実装
- モーション認識/自動生成
- 番組データ分析
- 5G/クラウド等の通信活用技術
- ギフトや演出技術
- ボイスチェンジャー系技術
- リアルイベント向け技術
- アバター社会の到来を見越したVTuber活動分野を広げる未来技術
例えば「新しいHMD作りました」って研究はどうでもいいんですよ(笑)。
そういうハードウェアの提案だけだと全く評価できないけれど、むしろ課題設定のほうが重要で。「このペルソナはHMDを被ったことが無かったけれど、VTuberのおかげで、この技術のおかげで『あ、この人に会いに行きたいから、デバイス装着してみました』」といった…技術と人の関係を作ってほしい、っていうことですね。
そういったアプローチの研究は、従来の設計やデザインにとどまらず、サービス工学やサービスVRとして学術的な価値も大きいです。世界のステージで注目されるサービスになる可能性があるし、既存のソリッドな工学分野に留まって考えるよりも発明などのIPを取得できる可能性もある。逆に「最先端の人間科学すぎて一般の人々には想像もつかない!」というレベルの研究も当然あって、こういう研究はヨーロッパなどでは盛んに研究されている分野でもあります。
あとは「これはアートなのでは?」とか「これはゲームなの?」とか、いわゆるテクニック的な意味での技術であってテクノロジーではないのでは?といった提案もどんどん集まってほしいと思います。実際にはアンケート調査もアートワークのワークフローも「技術」なのです。
例えば、「かっこいいシェーダーを作りました!」って提案が仮にあったとして、そのかっこいいシェーダーはアルゴリズム的にも軽量で、確かにかっこいいんだけど…そこまでの価値は見出されないけれど…というテクニックが、例えばVRMに着せる技術やVTuberさんが試着できる仕組みを用意すればどうでしょう?例えば「そのアバターの顔を見た瞬間だけ目がキラキラしちゃう!」といったシェーダーであれば「それは使えるよね」と、具体的に使い手とユースケースと、その表現や印象までが明らかになってきます。
こういった演出技術って、日本のこの手の創意工夫を世界ではちゃんと扱えてないことも多いんですよ。「演出」って我々が呼んでいる効果を英語で言えないのと同じように、演出というものをちゃんと技術として実装したり仮説を持ったり、実験したりというものをちゃんとやる習慣をもってほしいなと。
それと真逆の意見に聞こえるかもしれませんが、学生さんはもっと幅広く、エモーションだけでやっていいんですよ。たとえば、ゲームと融合させたいとか、eスポーツの司会をさせたいだとか、「俺の推しのVTuberさんにこういう番組に出てもらいたいんだ!」みたいなものを、まず一旦ノートにラクガキを描いてからスライドに着手してもらうといいのかなって、ラボのインターンや早めにエントリーしてきてくれた人には指導しています。
「自分の代表研究として、こういうものをやってきた」と示せる存在に
VRon 今回募集するにあたって、工夫されているポイントとかありますか?
しらい ちょっとした仕掛けをいくつか作ってありまして、例えば通常の学会だと「投稿」ってエントリーフォームに資料を提出したら終わりって感じですけど「あとからGoogle Slidesを変更してもいいよ」というスタイルなんです。なので締め切りまでに、まずはGoogle Slidesで構造的なところを埋めていって、URLが決まった時点で出してくれればそれでいい。で、レビューした時までに最高の状態になってれば別にいい、と。ちなみにサンプルのGoogle Slidesも用意してあります。これは締め切りに向けて時々更新していますので、質問があったらどんどん@VRStudioLabに投げてほしいですね。
【参考】 エントリーに必要となる提案追加資料(Google Slides)のサンプルhttp://j.mp/VTC19Sample
締め切りって大事で、「締切駆動開発」で普段は想像もしない能力を発揮する人もいるし、一方では他者のレビューも大事で、レビューをしされてから「あぁ、なんかこの辺もう少し変えた方がいいかも?」と思って手を動かせるのもいいですよね。それでよくなればいいし。改善する気力も時間もなければまあそこまでで形にするしかないしで、ズルズルと長く続けないハッカソン方式の良いところもとれるのです。
総エントリー数によりますが、予選通過すれば本人の確認後に公式サイトへの掲載と最終発表会に参加することができます。協賛の各社さんからサポートを頂いていますので、参加賞や、特別審査員、企業賞といった形での新しい出会いや機会創出が待っていますので、まずはエントリーしてね、っていうところです。
VRon 今後このコンテストが続いていく中で、長期的な展開・ビジョンというものを教えていただけますか?
しらい 具体的には、先ほど紹介した「技術分野」って、VTuber技術として今後求められる要素技術を列挙したのですが、一方でGREE VR Studio Labやグリーグループでライブエンターテイメント事業を進めるWright Flyer Live Entertainment (WFLE) が必要とする技術分野でもあるんですよ。例えばラボはボイスチェンジャー「転声こえうらない」を開発していますし、最近WFLEのREALITYは「低遅延モード」という新技術も公開しています。
製品やサービスとして公開できるものは、ごくごく一部ですが、ゼロをイチにするような挑戦はとても重要です。例えばラボはHMDと触覚に関しても様々な研究開発をしていて、そのひとつが山崎さん(触覚デバイス「Hapbeat合同会社」のCEO。東京工業大学の博士課程でスタートアップ企業を立ち上げ、GREE VR StudioLabでインターンでもある)のHapbeat応用研究です。「Haptic Minesweeper」のような視覚に頼らず方向を伝えるゲームシステムを開発したり、日豪VTuberライブを触覚でつないだり…山崎さん単体では難しいことに挑戦して発信できる環境をつくっていくことが大事です。
今回のVTech ChallengeにもHapbeatは協賛として参加していますので「触覚デバイスを使いたい!」という学生さんはエントリーして提案すれば、サンプル機材をレンタル提供してもらえる関係にあります。これによってHapbeatも活躍の場を広げられるという、まさに「VTuberが牽引する研究」なのです。「触覚」ってまだまだ遠い技術だよなー、という常識が「VTuber」のおかげでイマジネーションを刺激し、VTech Challengeの取り組みによって、大学2年生とか3年生ぐらいの才能が「やってみました!」といって、初めて人に向けてなにか新しい技術を発表する機会を得て、同時に常識を塗り替えていく…という新しい社会実装の流れを作りたいと思います。
遠くない目標としてはVTuberだけで学会が開ける……これは目的ではないですが。あとは……これはまだ検討している段階で、あくまで私の構想の中でのお話なのですが……、例えばコンテストを勝ち上がった人をアメリカの「SIGGRAPH」や「Laval Virtual」(フランスで毎年開催される「VR」に関する世界的な国際会議)に連れていく、みたいな「トビタテ」活動をやってもいいかなって思っているんです。国際会議なので学術論文の執筆や渡航など、コスト以外にも課題は多いのですが。でも、若いうちに海外の人々と接触して自分の考えをデモなりで示せるって、ものすごい良い体験だし、そのレベルの研究企画が応募として来て欲しいな、って思います。
実は、この夏、ラボがSIGGRAPHで開催した「Virtual Beings World」みたいなイベントって、結構海外の方々は興味あって「こっちのイベントでも開催して!」ってオファーがよく来ます。
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「#VirtualBeingsWorld in #SIGGRAPH2019 」「#WorldVTuberShowcase」開催レポート #VBW19
アメリカはロサンゼルスにて開催されております、CGの国際的な学会「SIGGRAPH 2019」内にて、日本時間で7月30 ...
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世界中のVRのカンファレンスで、アンテナセンスがある人たちは最新のHMDやARグラス、そして5GとかVRChatのようなメタバースとか、人間が牽引する新しいVR体験を主導したいって思っている、ということです。
仮に日本代表でそういう技術デモンストレーションを集めて展示会などを企画したとしても、日本語しか喋れない、日本でしか有名でないバーチャルアイドルなりキャラクターなりを連れていくと、100人中70人ぐらいにキョトンとされちゃいます。だからといって、じゃあその言語に合わせて喋りを変えよう…としても、もうそのキャラクターではなくなってしまう。だから、大事なのはやっぱり「技術」と「芸」と「人間」の総合力なんじゃないのかな、と。
一つのことを達成するにもいろんな技術があるし、それは学生が「ちょっと頑張ったレベル」で説明できない理解不能だし、GAFAや大人が研究開発としてやっている技術との関連を合わせて見せていかないと裾野みたいなものが見えてこないかなって、そういう感覚もありますね。
なので、このコンテストによって未開の学生さんたちには、どんどん自己実現して名を売れる場所にしていきたいし、それが学問的探求したい人には国際会議みたいなところに行ってみたいっていうマイルストーンも実現するし、もしくは会社立ち上げる人や就職する人にとってはインターンや就職するときに「自分の代表研究としてこういうものをやりました」と示せる存在になれればいいな、と思います。
VTuberにおいて今大事なのは、技術的・芸術的なスキルの高い人たちを、どれだけちゃんと褒めたたえられるか
VRon 今、VTuberの世界ではいろいろなことが起きていて、それは技術的な面だけでなく文化的・社会的な面でもいろいろなことが動いていますが、今後この「VTuber」というムーブメントはどうなっていく、とお考えですか?
しらい 実は今、危機的なものを感じていて。まずマクロな話をすると、例えば伝統芸能みたいな、能とか浄瑠璃とか見に行かないですよね。どんなに凄くても、どんなに人間国宝でも見に行かないですよね。で、なぜ見に行かないのかっていうと、いろんな人のいろんな理由があると思うんですけど、でね、今現実に僕が感じているVTuberにおける問題っていうのは、まさにそれが始まっているっていうことです。
大好きな人が何度も見に行く一方で、興味がない、見に行かないっていう人も増えていく。お客さんの裾野が広がっていかない問題。技術的なチャレンジとか、主演にこんなことをさせてみよう!といったチャレンジが落ち着いちゃって、同じお客さん向けて深めていく方向にだけ特化していく。
VRChatや個人VTuberの皆さんは今も昔も多くのチャレンジをされていますが「それが成長そのもの」なのかもしれません。個々個別の努力とは別にジャンル全体でのチャレンジがなくなってくるってことが感じられてくると、今度は面白いことをやる人や、それを期待する聴衆すらも減っていく。あとはどんどん硬くなっていって、挑戦したいが受け止められなくなり、提案したけれどもやれなかった……イノベーションのジレンマですね。
今後VTuber業界は、よりいっそうの技術的な品質と研鑽が求められ、個々のタレントはエモーションやパッションの体現、芸術スキルの高い人が求められます。そして、技術にせよ芸術にせよ人間にせよ、そのような若い才能をどれだけちゃんと褒めたたえられるかっていうのが、この業界に今一番求められるものだと思います。
変えていいことは変えていく。これはチャレンジだな、っていう事はどんどんやっていく
しらい さらに、どんなチャレンジをしたかっていうことを明確にきちんと出していく場やメディアを作ることも大切です。チャレンジとしてわかる。これはチャレンジだな、どう考えてもチャレンジだなっていう事はどんどんやっていく。その業界の一社がやるというよりは、沢山の会社が競っていて、感覚のいい人たちがそれに参加し、メディアはそれを素早く共有して「いいね」「いいね」って言言いながら、言われながらやっていくのが、一番健全で楽しいなと思います。
とはいえ、それがやれる会社というのはそんなに多くないです。皆どうしても自分の会社の仕事で一生懸命になりますから(笑)、「VTuber事業に3年で100億円投資する」って言っているような会社が率先してやらないといけないなぁ、って荒木英士(DJ RIO・株式会社Wright Flyer Live Entertainment・代表取締役社長)と話しながら、一緒に「いいね」「いいね」と言っています(笑)。
ニーズとシーズがあったら、「シーズ」(種)を先行しない。ニーズは協賛企業にいっぱいある
VRon では、今応募しようとされている方にメッセージを頂いて、この回を〆られればと思いますが、いかがですか?
しらい まず、「自分がやっていることが凄い技術かどうかが解らない」っていうことのほうが多いと思うんですね、なので、まずはとにかくタイトルを用意し、概要を用意し、スライドを作ってみてほしい、いや、スライドはサンプルを用意してあるので後回しでもよくて、まずはノートにラクガキしてみてほしい。わかんないな~、とかどうやって書きだしたらいいか?課題設定が難しいな…みたいな状況なら、VR Studio LabのTwitterアカウント@VRStudioLabに質問してもらって、ぜひコミュニケーションをどんどんとってほしいなと思います。
初めて研究コンテストに挑戦する学生さんのマインドとしては「本当に誰もやったことがないのが研究」なので、まぁ当然でしょうと楽観的になりましょう。誰もやったことがないことに挑戦することはとても素晴らしい、尊いことなので、そこは自信持ってください。
例えば…そうですね、「モーション関係のこういう技術があります」といった技術シーズを中心に提案を書くのではあまり輝いてこない。ニーズに注目しましょう。「自分が研究している技術を有名なVTuberさんがが使ってくれたら『エモい!』」、こういう下心をスタート地点にしていいんです。例えば「僕が大好きなVTuberの頭についてるこのアクセサリーがありまして、じゃあこのアクセサリーがこういうことが起きたらすごい面白いじゃないですかー」…とか、そういう素朴なニーズからのスタートでも全然いいんです。
で、学生さんにとって多く間違えることは、「大きなことを考えすぎ」。で、大きなことを考えすぎなのは良いことですけれども、ニーズとシーズがあったら、「シーズ」(種)を先行しないでください。こういう技術があって~とか、研究室でこういう研究してて~とか、それはそれでいいから、別に悪いことはない。だけどニーズがいっぱいあるんですよ、協賛している企業さんに。
例えばリアルアバターをスキャンさせる会社さんだったりとか、バーチャルキャストさんだったりとか、Azureやっているマイクロソフトさんだとかが、いろいろなソリューションを持っています。でもそのソリューションは「もっといろんな使い道に使ってもらいたい」というニーズがたくさんあります。そのあたりを一度調査して、提案していってほしいんです。これは僕たちの技術でこうなりますとか、でそれがVTuberの活躍になりますとか。いくつかの協賛企業はソフトウェアやライセンスなどを無償で提供してくれています。使ってみたうえで、乗り越えていくような発想を待っています。
しらい まとめると、まず完成した技術みたいなものにこだわる必要はありません。年末締切のエントリー時点では、タイトル、概要、URLが決まれば提出できます。で、「これを2月ぐらいまでに何か改善してデモするにはどうしたらいいだろう?」、「何をやったら映えるか?」でもっと良くなると思います。こういう技術あったらいいな、というものには先行事例はあるはずですし、「どうしてそれが挑戦なの?」という難しさを表現するうえでもニーズ分析をしっかりして、新しいソリューションになるような技術を提案していきましょう。
審査は(1)新規性、(2)技術力、(3)実現によるインパクトの3要素で評価していきますので構造的かつ伝わる表現を探ってください。図や絵や動画も使用可能です。審査する側がそれぞれの要素で「うーん、5点満点中5だな!」という結論が出せるように構築していきましょう。まとめや冒頭などに1枚で表現したレイアウトなどもあると総合的な評価や印象は良いと思います。
この「1枚でまとめたページを作る」というテクニックはページ数が増えてしまう場合も有効です。あとはコミュニケーションですね。エントリー直後にお送りするメールでも、TwitterのDMでいいので、質問があればどんどん聞いてください。何をしていい、ダメ、ということはなく性善説で動きますので、どんどんコミュニケーションを取りましょう!
というわけで、本コンテストについてじっくりと伺いました。VTuberの未来をも見据えた上で開催されるこのコンテスト、締切は今年いっぱいですので、まだ迷っている方はぜひご応募くださいね。
応募方法などをおさらいしましょう。選考方法は以下の通り。
- Twitterにて「@VRStudioLab」をフォロー 公式ハッシュタグ #VTechChallenge
- 応募フォーム ( http://j.mp/VTC19E ) に必要事項を記載(本エントリー期間:2019年11月14日~2019年12月31日(あと5日))
- 予選レビュー 評価基準は、1.新規性、2.技術力、3.実現によるインパクト(予選結果通知および公開確認時期:2020年1月上旬予定)
- 最終発表会 グリー本社にてプレゼンテーションおよびデモ(2020年2月21日予定)
しらいはかせ曰く「VTuberの活躍の場所を広げる研究であれば、『技術』をひろくとらえていただいて構いません!『技術シーズ』よりも『あなたのニーズ』が大事です」とのことですので、普段VTuberが大好きで何か技術をお持ちの学生の皆さん、まだ間に合います! まずは応募しましょう!
公式エントリーフォーム →http://j.mp/VTC19E
企業協賛・告知協力もまだまだ募集中(現在は2期募集中)です。ご興味ある関連企業の皆様や関連分野の先生方、ぜひご検討を!
学生エントリーフォーム → http://j.mp/VTC19E
協賛エントリーフォーム → http://j.mp/VTC19P
次回はこの11月20日にSIGGRAPH Asia 2019にて行われました「Global Bidirectional Remote Haptic Live Entertainment by Virtual Beings (VTuberによるグローバルな双方向触覚ライブ)」、そこで繰り広げられた「技術の舞台裏」に迫ります! お楽しみにー!
取材協力:GREE VR Studio Lab