私共VRonWEBMEDIA、記事を書き始めてからもうすぐ1年と半年が経とうとしております。この間、皆様からの御支援の下様々な記事を書かせて頂いたのですが、1年半経過して現在でも、ダントツで一番多くの方にご覧いただいているのが……
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【2020年11月版】VRゴーグル・VRHMD・MRグラスざっくり購入・比較ガイド
2020/11/11追記 NrealLightの一般販売発表を受けて、記事内容を更新しました。 ちまたには非常にたくさんの種類の「ヘッドマウントディスプレイ(Head Mount Display、以降 ...
こちらの記事。おととしの11月末に書いて以降、現在まで絶えずアップデートを続けさせていただいているのですが、やはり1年半も経ちますので、ちょっとここいらで別の角度からVRゴーグルを比較してみる、ってのも一考なのではないか、と。
そこで、今回は上記ガイドとは別の、ちょっと奥へ踏み込んだ視点でVRゴーグルについて考えてみようと思います。皆様のご購入の一助になれば幸いでございますよ!
自由度(DoF)についておさらいしてみよう
では、まずVRゴーグルに欠かせない一つの要素についてお勉強しましょ。
全てのVRゴーグルは「3DoF」である
VRゴーグル・VRHMDの機能を比較する上で欠かせない要素の一つに「自由度」というものがあります。よくVRonで「3DoF」「6DoF」とか言っている、アレです。
360度VRの映像コンテンツは、360度どの方向を向いても動画がある状態です。この全ての方向にある動画を表示させるため、巷にたくさんあるVRゴーグルは、頭に装着した時の「向きや傾き」=「角度」を検知し、それに合わせて表示する動画の部分を切り替えます。この「向きや傾き」に相当するのが、上のいらすとやさん謹製イラストにある「半円状に曲がっている3つの矢印」、ピッチ(Pitch)・ロール(Roll)・ヨー(Yaw)です。
現在私たちが見ている360度(180度)VR動画は、ゴーグルが頭のピッチ・ロール・ヨーの3つの「角度」を検知して同期しているから、あたかもその場にいるように見える、というわけです。
この状態を、3つの方向(角度)において自由になっている状態、という意味で「3DoF」(3自由度)と表現します。言い換えれば、全てのVRゴーグルは「3DoF」に対応している、と言えることになりますね。
この3DoF、現在のスマートフォンにほぼ標準搭載されている「6軸センサー」があれば基本的には対応できちゃいます。だから、簡易的なVRゴーグルは「とりあえずスマホがあればOK」というレベルで実現できるのですね。
「6DoF」に対応させるのは結構大変なのである
では、もう一つ冒頭に出てきた「6DoF」(6自由度)とは何でしょう?
Oculus Rift(Quest) / HTC Vive(Focus) / Windows MR / PSVR / Mirage Soloは、全てこの「6DoF」に対応しているのですが……と書けば、お分かりの方も多いかもしれません。
そう! 上の対応しているVRHMDは、すべて位置トラッキング(ポジション・トラッキング)に対応しています。
つまり「6DoF」というのは、ピッチ・ロール・ヨーの3つに加え、「上下」「左右」「前後」の動きにも対応することを意味するんですね! このいらすとやさんによるイラストでいうと、真っすぐの矢印3つが加わって、「6つの方向において自由である」状態。ゴーグルの傾き・角度だけでなく、「どこからどこまで動いたか」を3次元的に検知することができる、というわけです。
この「上下・左右・前後の検知」までを、VRゴーグルの機能として普通のスマートフォンに任せるのは簡単ではありません。なぜなら、現在のスマートフォンにはそれを検知できるだけの機能やスペックに乏しいから、であります(※ARによる位置検知はできつつありますが、VRゴーグルの機能としてはまだ使える領域にありません)。
そこで、ポジション・トラッキングに対応しているVRHMDの皆さんはどうしているのか、というと……
Windows MRさんのように「前方にカメラ型のセンサー」をつけたり……(インサイドアウト方式)
HTC Viveさんのように「周囲にセンサーを立てて、センサーとゴーグルの位置を計測」したりして……(アウトサイドイン方式)、ゴーグルがどの方向に移動したのかを検出しているんです。
今急速に発展しているARの技術進化により、スマホのカメラを使ってインサイドアウト方式の位置検出をする! なんて時代が来るのはそう遠くないかもしれませんが、現在のところ「6DoF」を実現させるのは簡単そうに見えて、けっこう大変なのです。したがって、3DoFに対応するVRゴーグルに比べて、6DoF対応ゴーグルはお値段が高くなる、というわけ。
「自由度」から見たVRゴーグルの比較分類はこうだ!
それでは、上記のことを踏まえて、ゴーグルを「自由度」の面から分類してみましょ。
VRゴーグルの分野において、3DoFと6DoFの違いは「位置トラッキング」できるかどうかの違いであることと同義です。また、使用するコントローラーにも3DoFと6DoFの違いがあり、6DoFに対応しているコントローラーの方が高機能であります。
ここから導き出せる、各ゴーグルの分類は以下の通り。
ゴーグルが6DoF / コントローラーが3DoF HTC Vive Focus(無印) Mirage Solo(※) Pico Neo |
ゴーグルが6DoF / コントローラーが6DoF Oculus Rift(S) HTC Vive(PRO) Oculus Quest PlayStation VR Windows MR HTC Vive Focus Plus Pimax 8K/5K |
ゴーグルが6DoF / コントローラーなし FOVE 0 ゴーグルが3DoF / コントローラーなし IDEALENS K2 Google CardBoard |
ゴーグルが3DoF / コントローラーが3DoF Oculus Go / Gear VR Google DayDream Pico G2 4K |
(※ 将来的に6DoFコントローラ―がリリースされる予定か、あるいは開発者版の6DoFコントローラ―が発表・リリースされているHMD)
右上が自由度の面では一番高機能。Oculus Go / DayDream / Gear VRの3種類は、機能上同じラインに並ぶ製品であることがわかりますね。また「Vive Focus」はLenovoさんの新製品「Mirage Solo」と自由度面で競合する、ということも言えます。
もちろん、自由度だけが比較対象にはなりません。解像度やリフレッシュレート、その他着け心地やプラットフォームの充実度などなど、いくらでも比較対象になる要素はあります。
ただ一つ確実に言えることは、この「自由度」の差により、体験できるコンテンツに差が生まれるということ。例えば、巷で大流行の「VRChat」はゴーグル・コントローラが共に6DoFでないと成立しないVRプラットフォームです。つまり、少なくとも上の表の右上にあるVRHMDでないと動作しない、ということになります(※ただし、VRChatはPSVRには対応していません)。
あなたが「VR空間」で何をしたいのか? その基準にこの「自由度」は大きく関係していきます。その上で、この「自由度」とVRゴーグルの関係性を知っておくと、貴方がVRゴーグルを買うときの大きな助けになるのは間違いありません。この機会に「自由度」について考えてみると、VRの世界へまた一歩近づけるかもしれませんよ!