SIGGRAPH Asia 2018 TOKYO コラム 特集

【新春スペシャル】それからのシーグラフ(2・バンダイナムコスタジオその2)

前回からお送りしております「それからのシーグラフ」。バンダイナムコスタジオさんご協力の元お届けする、2回目のインタビュー記事でございます。

今回は「REAL TIME LIVE!」で華麗に宙を舞った、あのキャラクターにまつわるお話です!

それからのシーグラフ 第2章 オリジナルキャラクター「ミライ小町」に込められたコンセプトと使命、そして未来開発統括本部が描く「それから」

髙橋誠史さん(未来開発統括本部 グローバルイノベーション本部 AI&先端技術開発部係長)と「ミライ小町」

「REAL TIME LIVE!」に採択されましたモーションキャプチャー技術「BanaCAST」のデモンストレーションにて登場した、健康的でアクティブなイメージが印象に残るバーチャルキャラクター「ミライ小町」。

SIGGRAPH Asia 2018におけるバンダイナムコスタジオさんの発表にて大活躍されていました他、2018年のCEDEC、CEATEC JAPAN、TechCrunch Tokyoにも登場していましたねー。

そんなバンダイナムコスタジオさんオリジナルキャラクター「ミライ小町」について、テクニカルディレクションを務められております高橋さんに、じっくりとお話を伺いました。


 

エンターテイメントの未来技術として面白いものを紹介する」

VRon それでは、まずミライ小町さんについてご紹介をお願いいたします!

高橋 ミライ小町、というのはバンダイナムコスタジオでゲームの開発に必要な技術ですとか、エンターテイメントの未来技術をわかりやすく紹介するキャラクターとして、2016年頃から作ってきました。

キャラクターデザインは社内ビジュアルアーティスト部門でのコンペを経てベースのデザインができまして、それに対して様々なゲームタイトルに関わる社内アーティストが、自分たちの作風やタッチで社内UGCとして活用できる素材となるよう制作しました。

この立て看板のミライ小町も元々のオリジナルデザインではなくて、昨年の5月に『VOCALOID4 Library ミライ小町』がYAMAHAさんからリリースされた際にパッケージデザインのコンペを行ったものです。「GOD EATER」チームのデザイナーであります「小林くるみ」(@bnskurumi)がデザインしています。

SIGGRAPH Asiaでもミライ小町が登場しましたが、他のイベント・展示会、技術発表の場などでも様々な形でミライ小町が使われています。バンダイナムコグループにはたくさんのIPがありますが、それぞれに世界観・キャラクターがあり、「技術や開発の裏側を見せる」といった目的で使うには難しい場面もあります。その問題を解決するためにミライ小町がいる、という感じですね。

(カッコ内は筆者による補足、以下同様)

公式ページにて公開されているキービジュアル(https://www.bandainamcostudios.com/works/miraikomachi/index.html)

VRon ミライ小町というキャラクターを作るにあたって、どのような力点を置かれたのでしょうか?

高橋 新しいキャラクターとして作るにあたり、既存のIPの狙いからちょっと外したところを設定しています。例えば、年齢はややお姉さんであまり過度に「萌え」路線にしていなかったりとか。技術検証に使いやすい、今回であればモーションをよりキレイに見せるためにボディラインがわかる形にするとか…ですね。

あとは、バンダイナムコのキャラクターで、ここまでバンダイナムコのコーポレートカラーでデザインしているキャラクターって案外いないんですね。

VRon ああ! 確かにそうですね!

高橋 はい、なので企業の宣伝役というところですね。それと、ボーカロイドの話は早くから決まっていましたので、「アイドル的」ではあるのですが、アイドルというよりは技術を紹介する(役割を担う)ということもありまして、他にもいろんな衣装のデザインはありましたが、モーターショーのコンパニオンや受付役のような衣装を取り入れたり……というところで、このデザインに決まりました。

VRon 今回「REAL TIME LIVE!」で3Dモデルとして登場しました。このモデルは初登場ですか?

高橋 3Dモデルとしては昨年のCEDECとCEATECでも登場していたのですが、今回が新しいモデルに切り替えてからは初のメディア登場です。以前はモバイル用に設定したモデルがあったのですが、大写しのスクリーンとかだとモデルの粗さが出てしまうので、昨年新たにハイスペックなモデルを作成しまして、「REAL TIME LIVE!」で(初めて)使用されました。

VRon 反響はいかがでしたか?

高橋 「REAL TIME LIVE!」でのBanaCASTパフォーマンスについては非常にフィードバックが多いですね。最近VTuberのブームによって様々なモーションキャプチャーのソリューションが低価格になりましたが、一方で手軽な分、BanaCASTのようにプロのダンサーのパフォーマンスを損失なく安定的にキャプチャーできるには至っていないこともあって、BanaCASTならリアルタイムでここまでできるんだ、という部分で大きな反響を頂いています。

「Unityのプロジェクトとして「オープン」にしたい」

VRon 今後このミライ小町についてはどのような展開をお考えですか?

高橋 そうですね。ボーカロイドだけでなく様々な活用をしたいと思っておりまして、まずは12月27日に新しいモデルを使ったミュージックビデオ「ミライ」を公開しました。

高橋 弊社のサウンドチームがやっているYouTubeチャンネルにて公開しています。

また、今後はこの映像でも使っている3Dモデルやキャラクターを、Unityのプロジェクトとして「オープン」にしたいと思っています。今はまだ調整中なのですが、まずはUnityのプロジェクトとVRM形式で出そうと思います。

VRon VRMで出るとなりますと、かなり使用範囲が増えそうですね!

高橋 そうですね。VRM対応のアプリを通じてUnityが使えない、という方にもいろいろと遊んでいただければな、と。規約だとかはまだ調整中なのですが、できる限り皆さんが楽しんで頂く上であんまり「使いにくいな」ってならないところのバランスを考えながら出したいな、と思っています。

キャラクターを(オープンの形で)出す狙いとしては、一つは我々のキャラクターはまだまだ認知度が低いので、その広がりを狙うことと、もう一つは、データを使っていただいた方と今後様々なコラボレーションができると良いなあ、というのがあります。

例えばプログラムやゲームを作っている学生さんとか、研究をしている方とか、企業の方とか……データを使っていただいた上で、「一緒にお仕事しましょう」といったことがあればありがたいな、と思っています。

ミライ小町のデータは、スマホでも十分動くのですが、今回(の新モデルで)スペックアップして、解像度の高いものを相手にしてもしっかりと見られる形にしてありますので、ハイスペックな用途でも使ってもらえたらと思います。

VRon 率直にお聞きしますが、何ポリゴンくらいですか?

高橋 今は90,000頂点、40,000トライアングルくらいですね。例えばこんな感じで……

高橋 こちらのアプリはiOSのARkitで作ったものですが、スマホでも処理落ちせずに問題なく動作できていますね。髪の毛の処理やフェイシャルな部分などについても対応した形でデータを作成してあります。今年のなるべく早い段階で公開したいですね。

VRon その他に考えていらっしゃる展開とかありますか?

高橋 すでにグループ内で決まっていることがいくつかあったりですとか、進行中のものも多くありますので、今後にご期待頂ければ幸いです。また私のいる組織の方ではAIを活用した技術研究を行っているのですが、その際のアウトプットとして活用したいな、と思っています。

「自分自身が「キャラクターになる」という点において、2019年は大変面白い年になる」

VRon 昨年はVTuberに関する話題が尽きませんでしたが、ミライ小町さんとVTuberの関係性、という点についてはどうお考えですか?

高橋 ミライ小町において現時点でVTuberに関する予定というものはないのですが、日本のゲーム会社やコンテンツを作っている企業が、海外のコンテンツを作っているところに対して「何が強みなのか」というところがわかってきた、というところがあるのではないかな、と。

日本型のこういうキャラクターってなかなか欧米からは出てこないので、その強みでどんどんキャラクターを作っていこう、というのは昨年の動きとして良い年だったな、というところです。また、Vocaloidに出したときに、「久しぶりにVocaloidで新しいのが出た」というところで、我々が思ったよりも海外からのVocaloidコミュニティから反応されることが多かった、というのは予想外でしたね。

もう一つは、VTuberって欧米で広がるというよりは、例えば中国などのアジア圏といった日本とコンテンツの消費が近い地域(での展開)というのは、やはり目指すべきところだな、有望だなと思う一方で、アジア(地域)からもどんどんこうしたキャラクターや技術が出てくるので、そこは追い抜かれないように……というのは、2019年において重要だな、と思います。

VRon ではちょっと砕けた質問を。高橋さん個人的に、ミライ小町さんの「ここがスキ」とか「推しポイント」とかって、ありますか?

高橋 うーん、そうですね……(笑)、

高橋 力を入れたところとしては、「明るいところ」とか「健康的」なところでしょうか(笑)。

(ミライ小町を作るにあたって)アクティブに活動するキャラクターとして設定した部分はありますね。健康的にアクティブに、様々なことにチャレンジするっていうところを踏まえて作った、というところがあります。それと社内の技術をフィードバックしやすい、という形は非常に重視しました。

VRon それでは、最後にVRonWEBMEDIAの読者の皆さんへメッセージをお願いします!

高橋 昨年は「VTuber」がスマートフォン上でARも含めたところでキャラクターを自分で動かしたり操作したり、というのが開かれた年で、それが今年2019年に花開くのかな、というところだと思います。そういった体験をするにはスマホにそれなりのスペックが必要になるので、(今のうちにスペックの)いいものを揃えて置いてほしいなー、というところですかね(笑)。

その上で注目したいのは、スマートフォンのARやカメラの技術を使ったキャラクターとのコミュニケーションや自分自身が「キャラクターになる」という点において、2019年は大変面白い年になると思います。ぜひ我々もそういったところでアウトプットを狙いたいな、と思っておりますので、よろしくお願いします。モデルが出ましたら、ぜひ使って頂けると嬉しいですね。

なによりもお話を伺って驚いたのが、「ミライ小町」というプロジェクトが先の先を見据えて考えられている、ということでした。

コーポレートカラーをベースにしたカラーリング、というのにまず驚き、3Dモデルのオープン化、しかも「VRM形式」での配布も見据えていらっしゃる、というところでさらに驚き……、このモデルに賭ける思いの強さと、なんといいますか、とっても前向きな「使命感」みたいなものを感じた筆者でございました。

高橋さんが特にVTuber界隈について達観していらっしゃったのも印象的でした。この時(取材したときは12月25日)はまさに4日前にVRMコンソーシアムが立ち上がったばかりだったこともあって、なおさら驚かされることしきり。バンダイナムコスタジオさんが現在のVTuber界隈に対してどうアプローチをしていくのか……、これは注目しなければ!!

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2020新卒採用は3月1日からスタートとの事です!

次回はいよいよ3回目。SIGGRAPH Asia 2018の「VR / AR」ブースで大人気だった「あの発表」について、詳しくお話を伺いましたよ! お楽しみにー!

取材協力:株式会社バンダイナムコスタジオ

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