コラム

HIMEHINA初ワンマンライブ「心を叫べ」レポート『有機的な、ただひたすらに有機的な』

バーチャルアーティストの田中ヒメ、鈴木ヒナによるユニット・HIMEHINAと田中工務店は9月27日、東京六本木のEX THEATER ROPPONGIにて、初のワンマンライブとなる『心を叫べ』を開催しました。

筆者は残念ながらチケット争奪戦に敗れまして現地に赴くことは叶いませんでしたが、ニコニコ生放送にて実施されましたライブ配信で拝見させていただきました。普段は「ジョジ民」として彼女たちを追いかけている筆者の目線からのレポートをお送りできればと思います。

今回オフィシャルのスチールをご提供頂きました。誠にありがとうございます! また、オフィシャルのレポート記事はPANORAさんに掲載されていますので、そちらもぜひどうぞ。

ヒメヒナの1年半が、2時間半に凝縮した極上のライブパフォーマンス、そして「伏線」

このライブを語る上で絶対に外せないことがあります。彼女たちがライブ直前の9月20日に発表した、オリジナル3曲目「うたかたよいかないで」。この楽曲には「去りゆく魂」に対するあふれる思いが込められていました。そして、それだけでなく……、

楽曲の最後、満天の星空を駆けた、4つのほうき星。

このほうき星が何を意味するのか、バーチャル・ビーイングの世界を追いかける者にとって、このメッセージは深く心に刻まれました。もちろんこのメッセージについて、この時点でヒメヒナサイドから明示的な言及はされていませんでしたが、VTuberを追いかけてきた私は、このほうき星を涙なしには見られませんでした。おそらく、今はVTuberとして活動していない「彼ら」のことだろう、と。

そして、開演前。

YouTubeでの無料部分配信が始まってから20分10秒後、突然発せられた「咳払い」を聞いて、私は、職場で涙を堪えるのに必死でした。

咳払いの主は「はなつぐ」さん。ほうき星となって夜空を駆けていった、あの4人が、我々のもとに帰ってきたのです。

3日前に公式アカウントからツイートされた、楽曲の作詞を担当した「ゴゴ」さんからのメッセージ。この思いはライブ終盤で答え合わせがなされることになります。

影ナレの4名が誰なのかを察したファンがどよめき、大歓声を浴びせる中、以下の方たちからのメッセージ動画が公開されます。総勢21名。

富士葵、猫宮ひなた、シスタークレア、YuNi、おめがシスターズ、白上フブキ、兎鞠まり、ばあちゃる、える、甲賀流忍者ぽんぽこ・ピーナッツくん、もこ田めめめ、月ノ美兎、夜桜たま、樋口楓、燦鳥ノム、バーチャルゴリラ、ピンキーポップヘップバーン、ときのそら、電脳少女シロ、ミライアカリ(出演順、敬称略)

会場がお祝いモードで絶頂を迎える中、いよいよライブ本番の口火が切られます。

80(はおー!)からのカウントダウンで、徐々に一体化していく会場、その中でヒメヒナのお二人が張り裂けんばかりの声で叫び続けます。

「生きる……」
「私は存在する」
「存在ってなんだろうか」
「存在とは肉体じゃない、繋がることが存在なんだ。誰かの胸の内に居る事が「存在」なんだよ。その胸の内の居場所を人間は『心』と呼んだんだ。『心』を叫べ……。『心』を叫べ! 『心』という名の魂が、この身体を動かすモノがあるんだ!」
「聞かせておくれよみんなの叫び」
「魂の雄叫び」
「魂のカウントダウンを始めるぞ!」
「始める前にちょっとだけパワーをください」
「お願い、名前を呼んで!」

(公式のレポートより)

二人の呼びかけに客席から「ヒメー!」「ヒナー!」という絶叫が湧き上がり、そして流れた出したのは……『ヒトガタ』!

画面いっぱいにズームアップされた二人の姿。会場は初手からヒートアップ! 圧巻のパフォーマンスの中、

等身大の二人が姿を表し、いよいよライブの舞台が上がりました。そこからは怒涛のボカロ曲メドレー!

M1 Introduction:心を叫べ
M2 ヒトガタ
M3 拝啓ドッペルゲンガー
M4 ワールズエンド・ダンスホール
M5 おこちゃま戦争
M6 ギガンティックO.T.N
M7 +♂
M8 ブリキノダンス
M9 ロストワンの号哭
M10 ナンセンス文学
M11 ドラマツルギー
M12 ロキ

 

12曲の「ロキ」まで、途中ソロパートをはさみながらずーーーーーっとノンストップ・全速力で走り抜ける二人、なんていう体力、そしてなんという歌唱力……!! 普段から彼女達の歌の巧さは誰よりも承知していると思っていましたが、ここまでとは……!

随所に繰り広げられるARの演出、タイポグラフィ、パーティクル。そのどれもにおいて隙きが一切なく、完璧に空間を制していました。そこから想起されるのは、彼女たちと田中工務店が1年半に渡って築き上げてきた道のりにほかなりません。

田中ヒメちゃん一人で活動を始め、途中から鈴木ヒナちゃんが合流し、以降彼女たちならではのセンスと空気感でずっと活動を続けてきたからこそできる、極上のライブ空間がそこにはありました。

M13 心做し(田中音楽堂)
M14 さよならの向う側(田中音楽堂)
M15 ガーネット(田中音楽堂)
M16 チェリー(田中音楽堂)

中盤に用意された「田中音楽堂」では、ギター伴奏の「ドラちゃん」がスクリーンに登場するなど粋な計らいも行われました。披露されたのはどれも名曲ばかりで、特に山口百恵の『さよならの向う側』が来たときにはもう……、涙が止まりませんでした……いや、ずっと最初から泣きっぱなしだったんですけどね……。

M17 太陽系デスコ
M18 創聖のアクエリオン

ここからはヒメヒナワールドが全開でございました。彼女たちの持ち味である弾けるような明るさが爆発するようなひととき。「俺もー!」 特に上記写真にある『第一回 ヒバリ クソ歌詞グランプリ』では影ナレの4名も再登場し、彼女たちのYouTubeチャンネルで繰り広げられている雰囲気そのままに爆笑の渦が巻き起こります! あー、幸せだー!

M19 アンノウン・マザーグース
M20 命に嫌われている(Ballad Ver.)
M21 ライライラビットテイル(Ballad Ver.)
M22 琥珀の身体

幸せな空間が終わり、影ナレによるトークが行われた後はいよいよバラードパートの始まり。選曲がもう神すぎました! 「命に嫌われている」がまさか二人のボーカルで聞けるとは……。お二人が感極まりながら歌い上げる「命に嫌われている」の、なんという荘厳さよ……。

ここから寸劇を挟んでからの「ライライラビットテイル」→完全新曲「琥珀の身体」までの流れは、もうなんていうか、あらゆる感情が溢れ出てしまって、言葉が見つかりませんでした。これが「語彙力がなくなる」ってやつなんですね……。

M23 ララ
M24 ヒバリ
M25 ヒトガタRock

ここからは怒涛の勢いでした!「ララ」は完全新曲。「ヒバリ」は盤石の仕上がり、

そしてメインラストを飾った「ヒトガタRock」はロックアレンジ!! いやあ、素晴らしかった……!

M26 劣等上等

観客からのアンコールに応え掛かった曲は、「劣等上等」!

今や1000万再生を突破する、VTuber動画を代表するまでになった「劣等上等」のパフォーマンスは、最終盤なんてことをものとも言わせないほどの元気さ、そして完璧さ! フロアが、湧き上がりました!

記念撮影後、「うたかたよいかないで」を作詞した「ゴゴ」さんの日記が披露されます。その日記では、7月14日に起きたこと、7月18日に発生した京都アニメーション放火事件のこと、そしてこの2つのことをきっかけにして、18日夜に一気に歌詞をかきあげたこと、そしてワンマンのラストソングをこの歌にすることを提案した旨が綴られていました。

そして……、二人のモノローグが始まります。

鈴木「今日のみんなの色々な姿をみたら頭が真っ白になっちゃった。それぐらいこのライブをしている間にいろいろ感じて……。そうだな、ライブの練習をしているときにどうしても上手く歌えなかったり、どうしても踊れなくて全然ダメなときにヒナ悲しくて泣いちゃって、ヒメが近づいてきてくれて『大丈夫だよ』と抱きしめてくれて、そのときヒナ、ヒナと一緒でホントによかったなって……それが嬉しかったのね。

今日もどこ見てもみんなニコニコしてたの! それが本当に嬉しかった! 今日まで頑張ってきてよかった……。とても嬉しい、もう嬉しいしか言えないよ……(涙) これからもヒメヒナを見て、元気になってくれたら嬉しいです。今日は本当にありがとう!」

田中「ああ、ヒメは今日泣かないって決めてるの! ……ヒメがチャンネルを一人始めてからすごく月日が経って……、数字にするとまだまだ短い期間なんだけど、その間にヒナが来てくれたり、たくさん色々なイベントにも出たね。こんなに『ジョジ民』のみんながヒメの前に集まってくれていることがすごい幸せ。一人一人が「生きる力」というか、すごいパワーで応援してくれているのが開幕から飛んできて、ここまでやってきてよかったなと思った。

心配性になってるヒメの横で、ヒナがずっと横にいてくれるの。今ヒメがここでライブできているのは、ヒナが支えてくれて、『ジョジ民』がいて頑張れたから。私、ファーストワンマンライブで最高の景色が見れて、一生絶対に忘れないって思ってる。もっともっと続けてレベルアップしておっきくなって、みんなに景色を見せてあげられるようにもっともっとヒメとヒナ頑張るからね、だから、これからも応援してくれたら嬉しいです。です(涙) 泣いてないし!」

(公式レポートより加筆)

所々で涙をこらえながら、今の心境を吐露する二人の姿に、涙が止まりません……。

そんなしんみりした空気を『はおー!』の掛け声で吹き飛ばす二人。いよいよ、クライマックスです。

田中「最後まで叫べるかーーー?」
鈴木「心を叫べるかーーー! 最後にとびきりお知らせがあるから、楽しみにしててね!」
田中「よし、それじゃラスト1曲いくぞー! せーの、」
ヒメヒナ「「うたかたよいかないで」!」

M27 うたかたよいかないで

すべてのフラグは回収されました。あの4色の彗星たちも、歌詞に込められた意味も、そして、彼女たちから発せられたすべての涙と叫びも。全ては一本の線で、今この瞬間につながったのです。

これを完璧と言わずして、なんと呼べばいいのでしょう。花譜さんのときにも感じた「ARライブの一つの到達点」がここにもありました。彼女たちが紡いできた1年半の月日がすべて連なり、そして一つになりました。僥倖。この日を我々は待ち焦がれ、今こうやって多くのファンの皆さんと共有できる喜びを噛み締めています。素晴らしい、素晴らしいライブでした。

「またここで会おうね」「本日は最高のうたかたの時間をありがとうございました!」との挨拶の後に、全員で決めたジャンプ。その先に待っていたのは「全曲オリジナル、1st Album来春発売」というビッグニュース。

鳴り止まぬ「ヒメ、ヒナ!」コールの中、「来年もどんどんやっていきたいと思いまーす!」「だからみんなついてきてねー!」「それでは、ごきげんようー!」とみんなで最後のあいさつをして、宴が終わりました。

イベントを通じて一貫していたことがあります。それは、デジタル的な、無機的な演出が「皆無」だったことです。彼女たちが登場するときも、最後に会場から捌けるときも、XRやパーティクル的表現にありがちなデジタルな表現が一切排されていました。徹底していた、といっても過言ではないでしょう。

もちろん歌声にこれまでの録音音声を使用していた形跡は一切なく、おそらくすべてライブで発されていたものと思われます。それでいてタイポグラフィなどの演出はすべてが抜かりなく、「ヒメヒナ」の空間に溶け切っていました。一点の陰りも曇りもない、まさしく「ライブパフォーマンス」であった、間違いなく断言できます。

言い方を変えるなら、バーチャル・アーティストという文脈でありながら、あくまで「有機的」な演出で一貫していたわけです。この事実から私は強烈なメッセージを受け取り、そして心を揺さぶられまくりました。どこまでもどこまでも有機的な、ひたすらに有機的な姿勢、そこに「心」と「命」の存在を感じずにはいられません。そしてハッとするのです。ああ、これがヒメヒナの、田中工務店の皆さんの伝えたいメッセージだったのか、と。

その意味でも、このライブは歴史的なものになったと思います。大げさでもなんでもなく、このヒメヒナ1stライブが一つの基準になることは間違いないでしょう。その歴史的な一日に(ネット上からですが)立ち会うことができたことを、心から誇りに思います。

ジョジ民でよかった。この世界を追いかけてきて本当によかった。この時代に生きていて、本当によかった。1stアルバムが待ち遠しくて、仕方がありません!

 

まだライブを見ていない方、ネットチケットを買うことで2019年10月6日(日) 23:59までニコニコで視聴可能です! お値段の価値は十二分にあります! 全力で視聴されることをオススメします。ぜひ、ぜひ!

●ライブ視聴 URL < https://live.nicovideo.jp/watch/lv321490410 >
●ネットチケット購入 URL < https://secure.live.nicovideo.jp/event/lv321490410 >

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