その時、私は渋谷におりました!
AR技術を中心にサービス開発を手がける株式会社MESONは8月3日、日本から世界へARの情報を発信するARコミュニティイベント「ARISE #1」を、東京にあるAbema Towersにて開催しました。共催にはゲームクリエイター水口哲也氏が率いるエンハンス社、および株式会社サイバーエージェントにてXR(VR/AR/MR)開発に取り組む「XR Guild」の二社が参画しています。
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MESON、ARコミュニティイベント「ARISE」を発足、第一回を8月3日(土)に開催
株式会社MESONは16日、ARコミュニティイベント「ARISE(読み:アライズ)」を創設しました。共催にはエンハンスと、株式会社サイバーエージェントにてXR開発に取り組む開発者集団「XR Guild ...
テーマは「2019年のARを振り返り、これからのARの未来を考える」。KDDIとの業務提携でも話題となりましたメガネ型MRデバイス「Nreal light」を開発する中国のNreal社も登壇、と非常に注目されましたこのイベント、VRonは取材でお邪魔させていただきました。
いよいよ次回「#2」の詳細も明らかになったことですし、大変長らくお待たせいたしました、「#1」の模様をVRonの視点からまとめてご紹介させていただきます。なお、当日の模様はYouTubeで配信されましたので、こちらもあわせてどうぞ!
「ARISE #1」ダイジェスト
XRメディアセッション
まずは、株式会社Mogura代表の久保田瞬さんによる「XRメディアセッション」から。
まずはVRとARの現状について。ARはスマホのAR機能によりVRよりも普及が進んでいますが、VRはようやく普及をし始めた段階、という分析をされています。今一番流通しているPSVRでも全世界で500万台というボリュームですから、まだまだこれからですね!
一方で、ARでもMRデバイスとスマホARでは普及に大きな差があります。まだまだMRデバイスはお値段が高めで、今最も流通しているHoloLensでもスタンドアローンのVRHMDに比べたらまだまだ高いですからね……。
実際のところ、スマホのアプリなどではAR・MR技術を使ったアプリが隆盛を見せているものの、本格的なMRデバイスの普及はこれから、というところを解説されていました。
こちらはゴールドマン・サックスによる、2017年をベースにしたVR/ARに関する売上予測。2018年のレベルではVRハード機器が大半を締めますが、ARハード、ソフトが徐々に幅を利かせ、2025年にはVRとARの市場がほぼ並ぶという予測になっております。
こちらはご存知! ガートナーのハイプ・サイクル(2018年)。2018年の時点でVRはすでに安定期に入り(表から姿を消している)、ARが幻滅期の底を打ちそうだ、という段階にいるのがこの表からわかりますね。
で! こちらが今年のハイプ・サイクルです。見ていただくとおわかりの通り、ARもグラフから姿を消しています(安定期に入った、という意味)! 代わりにグラグに登場したのが「ARクラウド(黎明期)」で、リリースでも以下のように言及されています。
例えば、今後10年間で、AR (拡張現実) クラウドは世界の3Dマップを生成するでしょう。これによって、新しいインタラクション・モデルのほか、物理的な空間から収益を生み出す新たなビジネスモデルが実現すると予測されます。
センシング/モビリティ機能の活用を目指す企業は、3Dセンシング・カメラ、ARクラウド、軽貨物配送ドローン、自律型航空機/空飛ぶ車、自律走行 (レベル4/5) を検討すべきです。
というわけで、ARにまつわる技術は今後新たなる段階へ入っていきそうですね! さすがはすんくぼさん、多面的な観点から現在のVR/ARに関する動向をご紹介いただきました!
スタートアップセッション
続きまして行われましたのは「スタートアップセッション」。AR業界を牽引する4人のファウンダーの方々によるセッションです。おおおっ! 福田さんじゃーないですか! 今回参加された4名の方はこちら。
- 梶谷健人さん / MESON
- 福田浩士さん / meleap
- 伊藤武仙さん / ホロラボ
- 森本俊亨さん / Graffity Inc
「AR的今年最大のインパクトは?」という質問で、皆さんがARグラスの登場と国内キャリアの資本投下を上げる中福田さんが「個人的にはARの進化はまだ遠く感じる」と話していたのが印象的。ARスポーツ目線では特に視野角の面での進化を望むとも。HADOをAR界のF1に例えていたのが腑に落ちました!#ARISE pic.twitter.com/QlwDB9g2Oi
— VRonWEBMEDIA【公式】 (@VRonjp) August 3, 2019
その福田さんのお話をかいつまんでまとめると、こんな感じでした。
福田「6年前からARをやっているんですけど、正直なところ「まだここか」という感覚がありますね。HADOとしては、やっぱり視野角が100度くらい欲しいですよね。普段遣いなら低視野角で良いって思うんですけど、僕らがやってることって、自動車業界で言うところの「F1」みたいなものなので、HADOをやっている立場だと足りないです。今は「一緒に(ハードを)作りませんか」というお話もよくいただきます」
ここが非常に印象に残りましたねー。求める位置の差もありますが、こういう目線もあるんだな、ということが浮き彫りになっていたのがとっても面白かった!
ただ、他のお三人方が口を揃えて「ウェアラブルARグラス」に注目していたのは、やはり今のメインストリーム的な流れとしての傾向なのだな、とも。まーねー、ドコモがMagicLeap、KDDIがnrealLightへのアプローチをするなんて、思っても見ませんでしたから!
今回のセッションは皆さんの業務領域がうまーくバラバラになっているところがいい感じのトーク内容につながったのではないかと思います。森本さんはコンシューマ向けARタイトルで、梶谷さんはARベースのB向けコンテンツ、伊藤さんはザ!HoloLensで、福田さんがARスポーツ……と、大きくベクトルが違う中で同じ質問に対して違う視野からの回答がつまびらかになったのは、リスナーとしても非常に収穫が大きいかと思います!
ディベロッパーセッション
続いてエンジニアセッション!
#ARISE pic.twitter.com/3bc4c3VU6q— VRonWEBMEDIA【公式】 (@VRonjp) August 3, 2019
つづいて以下のメンバーによる「ディベロッパーセッション」。
- 比留間和也さん / MESON
- 服部智さん / サイバーエージェント「XR Guild」
- 佐藤豪さん / Psychic VR Lab
佐藤「まだARの世界では画像マーカーが幅を利かせてるんですよ。まだ実際の空間のみでマーキングするのはSDKレベルで正式サポートされていなかったりするんです。我々としてはその意味でも空間デザイン的な側面からのアプローチについてもっと尽力しなくてはならないと思います」#ARISE pic.twitter.com/uuPT8zjM6q
— VRonWEBMEDIA【公式】 (@VRonjp) August 3, 2019
こちらはまさしくエンジニア目線からの「AR」について、かなり突っ込んだお話が展開されました。その中でも特に興味を惹かれたお話が上の2つ。特に佐藤さんが今後メインストリームになっていくであろう「空間のみを使ったマーキング」へのアプローチについて言及されていたのがとても印象的でした。
スペシャルセッション1「NrealLight」
スライドだけでもこのインパクト、強い。#nreal #ARISE pic.twitter.com/MwWJvDOxoX
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このあとに行われたのが、Nrealのバイスプレジデント、JOSHUAさんによるNrealLightのご紹介。こちらについては後日別途取材させていただきましたこちらのレポートにて詳しくご紹介しておりますので、そちらをどうぞ!
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toC向けスマートMRグラス「NrealLight」先行体験会へお邪魔して、 Nreal Ltd.の次の一手を伺いました!
その時、筆者は赤坂におりました! スマートMRグラス「NrealLight」のデベロッパーであるNreal Ltd.は7日、 日本市場での事業計画発表及び 2020 年に発売予定の NrealLigh ...
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当日は抽選ながらプレイアブル展示も行われまして、実際に体験された方々からは「うおおお!」と感嘆の声も上がるなど、大きな反響を呼んでおりました。来年のコンシューマ版リリースが楽しみですねー!
スペシャルセッション2
さーて、スペシャルセッションですよー!!
#ARISE pic.twitter.com/xh3poFDrWt— VRonWEBMEDIA【公式】 (@VRonjp) August 3, 2019
セッションの最後を飾りますのは、建築家の豊田啓介さんとエンハンス CEOの水口哲也さんによるトークセッション。いやー、濃かったですねー! 当日のツイートを中心にお届け。
続いて水口さん。エンハンスのCEOとして現在もさまざまなタイトルをリリースされている伝説のお方です。昨今のさは「共感覚」をテーマに先進的な作品を精力的に発表されています。#ARISE pic.twitter.com/vqmuROPlUf
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水口「オリンピックが近いですけど、結局オリンピックにはAR的には何も出来無さそうが気がしています。できるとしたら万博かな」
豊田「何かをオーガナイズしようにも20世紀時代のものを引きずって何もできない感じがしますよね。だったら万博ならまだ6年あるし、可能性や意味合いはある」#ARISE pic.twitter.com/Cq4jbRZ4ML— VRonWEBMEDIA【公式】 (@VRonjp) August 3, 2019
本当にこの最後のツイートでご紹介した内容が非常に示唆に富んだ内容でした。昨年の10月9日にパリ日本文化会館で博覧会国際事務局(BIE)加盟国に対し、招致会場計画のアドバイザーとしてプレゼンテーションを行った豊田さんのお話はめっちゃくちゃリアルで、都市計画・建築という概念とARのアプローチについて深いお話が展開されました。また水口さんからは……
3年前に発表されたこのケイイチ・マツダさんによる作品『HYPER-REALITY』を例に出しつつ、利用者が何を求めているのか、という観点の中で「ユートピアとはなんだ」という議論がある、と指摘されていました。ただARの技術を使って無軌道に便利にしていくことが本当に人類にとって幸せな結果につながるのか、という視点がとっても鋭かった……!
セッションの最後には、次回「#2」の開催も発表されました。本日リリースされました詳細情報もVRonでお届けしますので、そちらもぜひ。
記念撮影の後は懇親会!
非常に内容の濃かったイベントでございました!後日お送りするレポートをお楽しみにー!
現場からは以上です。
#ARISE pic.twitter.com/KEEAOZPjmv— VRonWEBMEDIA【公式】 (@VRonjp) August 3, 2019
今回参加させて頂いて特に印象に残ったのが、各セッションの専門性とわかりやすさが奇跡的に同居し、非常に広範囲な分野向けの内容になっていたことでした。もちろんコンシューマ向けになっているわけではありませんが、ARをこれから学ぼうという人にも、今バリバリAR開発してます!という人にも配慮がなされていたことが非常に印象的でした。これは次回の#2が楽しみですねー!
今後もVRonはARISEの皆さんの活動を引き続きお伝えしてまいりますので、どうぞお楽しみに!
取材協力:MESON