やってまいりました、横浜に!
一般社団法人コンピュータエンターテインメント協会(略称:CESA、会長:早川英樹、所在地:東京都新宿区西新宿)は、本日2019年9月4日(水)から9月6日(金)の日程で、パシフィコ横浜会議センター(神奈川県横浜市)において、「CEDEC 2019(セデック:Computer Entertainment Developers Conference)」を開催しています。
今回公式メディアパートナーとなりました我々VRonWEBMEDIA、昨年の「SIGGRAPH Asia 2018 TOKYO」に続き、「随時更新」でお送りさせていただきます! まずは本日行われた「Day 1」から!
CEDEC 2019 1日目レポートまとめ
おはようございます!
本日から3日間、パシフィコ横浜にて開催されます「#CEDEC2019 」にお邪魔いたします。様々な形で皆様に当イベントをお伝えしてまいりますので、どうぞお楽しみにー! pic.twitter.com/CuUIDVj8zC— VRonWEBMEDIA【公式】 (@VRonjp) September 3, 2019
昨日の暴風雨で天候が心配されましたが、なんとか今日は持ってくれました。朝9時前に到着しましたが、すでに会場には人、人、人!
トップバッターを飾ります水口哲也さんの基調演説には、ものすごい長蛇の列が! SIGGRAPH Asia 2018 Tokyoとはまた違う熱量です!
「ゲームの、そのさらに先へ新たな体験の創造に向かって」(水口哲也さん・Enhance 代表取締役)09月04日(水) 09:45 〜 11:05
日本のゲーム業界において、独特の作風とセンスで様々な作品を作り上げてきた「レジェンド」の一人、水口さんによる基調演説が始まりました。
ビデオゲームとは、テクノロジーの発展とともにそれを取り入れ続け、進化している「体験のメディア」である、と切り出した水口さんは「「体験のメディア」の代表はゲームだと思う」と、まさにCEDECの基調演説にふさわしい幕開けでお話を始めます。
水口さんがゲーム業界に身を投じたきっかけになったのは、SEGAにおいて伝説とも呼ばれる大型筐体「R-360」。「SEGA入社前にR-360を見て、すごい筐体だ、しかもこれなら、言葉を超えて面白さが伝わるじゃないか、と思い、SEGAの受付に直訴しました(笑)」とお話されていました。感覚をテーマに作品を作られる水口さんならではの、有名なエピソードですね。
もう一つ契機となったガジェットがこちら、NASAが開発したVRシステム(1988年)。80年代末~90年代初頭にかけて勃興した「第一次VRブーム」を象徴する筐体ですね。水口さんはこの仮想環境表示システムを見てバーチャルリアリティ(VR)を知り、SEGA面接時にVRの重要性を熱弁、採用されたんだそうです。
そこからは、水口さんが手がけられてきた作品を振り返りながら、これからのゲームコンテンツを占うという流れになっていきます。
SEGAではARのプロトタイプを勝手に制作していたんだそうです。上の写真がそれ(1991)。ベースにしたのは知る人ぞ知る携帯型ゲーム機「ゲームギア」。その後水口さんはVRアーケードの開発に携わることになります。
一番最初に携わったのがセガラリーチャンピオンシップ(1994)。セガの伝説的な基盤「Model2」を使用し、3Dにテクスチャを貼れるようになったことで各車のディテールを表現することを可能にしました。実車を使った4軸駆動モデルもジョイポリスで展開していましたよね。そうか……今から25年も前の話なんですね……(筆者は当時大学生)。
その後水口さんは身体感覚とゲーム体験、そして「音」の力による共鳴を追いかけるべく、家庭用コンソールの進化によりコンソールタイトルの開発に移行することになります。第1作は皆さんご存知「スペースチャンネル5」(1999)。つづいて……
「Rez」(2001)。リズム感を必要とせず、ゲームをプレイしながら音と一体になれるような感覚の創出を目指していたそうです。
しかし、当時は3Dを想定したロジックでの開発と、実際に2Dでアウトプットされる現実とのギャップに苦しんだそう。この思いは後に「Rez infinite」にて昇華させることになります。
その後、パズルと音楽を融合させた「ルミネス」を開発(2003)。シーケンサー的概念をパズルゲームに盛り込みました。「これまでのゲームでは「音」が冷遇されてきたんですが、PSPにてヘッドホン端子が標準装備されたことで、携帯型コンソールで音の重要性が追求できるようになったきっかけになったと思います」と話されています。
しかし、2011年に「Child of eden」(2011)にてKinectを使用し、ハンドトラッキングを使ったゲームを開発したあと「疲れてしまった」と。Kinectなどあらゆる技術を使っても、どうしても「四角い画面に向かった、何かが喪失している状態」に陥り、水口さんは3年ほどゲーム開発から離れます。
転機になったのは2014年頃からアメリカで勃興した「VRブーム」。この時点で日本にはブームがまだ上陸しておらず、アメリカにVRのリソースが集中していたことから、アメリカで法人を設立し……
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【VRヒストリー】15年の時を経て、PSVRで蘇る。「共感覚」がテーマの異色ゲーム「Rez」
こんにちわこんばんわ。 VRにまつわる歴史のあれこれを、筆者の体験を交えたり交えなかったりしながらつづっていく「VRヒストリー」。 今回は、こちらです。 © ENHANCE GAMES / DEVEL ...
「Rez Infinite」をリリースします。特に「AREA X」ではパーティクルのみで構成されており、共感覚の可能性を3D+VRで目指されました。
筆者にとっても「Rez Infinite」は感慨深い作品です。その思いの丈は上の記事で3年前(!)に書きましたので、よかったらぜひ。
水口さんいわく、実際にゲームをプレイしてもらい感想を聞くと「表現しようがない(ボキャブラリーが見つからない)」という答えが次々と返ってきたそうです。これらのことから「これからは『新しい体験』を提供できる時代が来る」という手応えを感じたそう。同作品はGame AWARD(アメリカ)にてBest VR Gameを受賞しています。
「Rez」から「Rez Infinite」へ結実したことについて水口さんは、
「Rez」時代に伝えたくても理解してもらえなかったものが、時を経て評価されたことは自分にとっても非常にエポックであり、嬉しかったです。そういう意味でも「体験」というものに時間は関係ないのだ、と思っています。
と話されていました。
現在も水口さんは「共感覚」(シナスタジア)をテーマに、様々なアプローチを続けられています。シナスタジアスーツや、シナスタジアXI。2.44(evala、ライゾマティクスとの共同プロダクト)などがそうですね!
現在はUE4にて「シナスタジアエンジン」モジュールを開発しているそうです。
最後に、水口さんがお話されていたことがとっても印象的でした。箇条書きにしたメモをそのまま載っけてみます。
これからは情報の時代から体験の時代に移行するだろう。そして、一人称と三人称、能動と受動のフュージョン型が登場し、境界が溶けていくと考えている。
VRブームが始まったとき、我々がまたゼロから始められたことは大きい。誰もが「先生」がいない中で、自らの中から「アウトプット」を迫られたことは大きな体験となった。今後、こういった「経験のリセット」はもっと起きていくと思う。
どんなものでもいいものが作れるようになった時代になった。ここにこれまでに我々のノウハウを詰め込み、投下できるタイミングがくると思う。ゲームに限らず、新たな体験を作れるよう、みなさんと頑張っていきたい。
新しい概念が生まれ勃興するときに、「ゼロから始められる」ことの重要性を語っていらしゃったことがすっごく印象に残っています。これまでの経験が通用しないことに嘆くのではなく、むしろ新しいものを創造できる「チャンス」と考える、その重要性をなんか、ド直球のストレートで投げられたような、そんな気分になりました。
さすがは水口さん! 素晴らしい基調演説でした!
ポータルAR/VRアプリケーションに真のリアリティをもたらす、クロノスのオープンスタンダードAPI: 「OpenXR」、 「Vulkan」 09月04日(水) 11:20 〜 12:20
お次はこちら!
#CEDEC2019 pic.twitter.com/NWTKLfmGQB— VRonWEBMEDIA【公式】 (@VRonjp) September 4, 2019
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クロノス・グループ、AR/VRの標準化仕様「OpenXR 1.0」を正式発表、無料公開を開始
オープン・コンソーシアムのクロノス・グループ(以下:クロノス)は30日、OpenXR™ 1.0 仕様を承認し、本日より無料公開したと発表しました。 ついに仕様策定! VR / ARの統一 ...
7月30日に発表されたばかりのVRデバイス統一規格「OpenXR」、さらにリアルタイム3次元コンピュータグラフィックス・コンピュートAPIである「Vulcan」について、クロノス・グループの代表であるニール・トレベットさん(NVIDIA)が自らプレゼンテーションを行いました。めちゃくちゃ専門的な内容なので、後日別記事にて詳しくご案内します!
エースコンバット7 VRが実現したエースパイロット体験のひみつ / 「空」と「物語」を演出するためのインタラクティブサウンドデザイン ~エースコンバット7における楽曲と効果音実装/VRについて~
お次はここ!
#CEDEC2019 pic.twitter.com/5HDOPhmzHK— VRonWEBMEDIA【公式】 (@VRonjp) September 4, 2019
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バンダイナムコエンターテイメント「ACECOMBAT 7 SKIES UNKNOWN」の「VRモード」をガチで体験レポートしました!
いやー、先日17日に、ついに発売されましたねー!「エースコンバット7」! エースコンバットシリーズとしては2007年に『ACE COMBAT 6 解放への戦火』が発売されてから、実に12年ぶりとなりま ...
VRonでもプレイレポートを書かせていただきました「エースコンバット7」、ファン待望のナンバリングタイトルにてついに搭載された「VRモード」について、2つのセッションを取材させていただきました。「サマーレッスン」から受け継がれたバンナムさんの「VRコンテンツ制作」に対する苦悩と挑戦が赤裸々に語られましたよ。こちらもかなーり濃い内容になりましたので、こちらも後日別記事で!
ルミナス・エンジンへのリアルタイムレイトレーシング実装事例の紹介
本日最後はこちら!
#CEDEC2019 pic.twitter.com/JDzxZROn12— VRonWEBMEDIA【公式】 (@VRonjp) September 4, 2019
本日最後にお邪魔しましたのは、NVIDIAさんと株式会社Luminous Productionsさんによる「レイトレーシング技術を使用したリアルタイムレンダリングデモ」。
レイトレーシングというのは次世代の3DCG描画技術で、「光線の伝播を物理法則に従ってシミュレートすることによって写真のような表現を得る」というものです。光線を基準にした物理演算を行うためめちゃくちゃマシンパワーを必要としますが、特に物質の透明性などを正確に描写できることから、次世代の3DCG描画技術として各所で開発が続けられています。
今回のデモ「BackStage」は、Luminous Productionによるゲーム開発エンジン「Luminous Engine」の一環として発表されたもので、レイトレーシングのひとつである「パストレーシング」を導入して制作されました。実際にNVIDIAのつよつよグラボ「RTX2080」を搭載したPCが用意され、そのPCからダイレクトに描画されたCGが公開されたんですね。それが上の写真。
この技術デモでは一切「ラスタライズ」(演算などで得られたCGデータを「ビットマップ画像」の形式に変換すること)をしていないそうです。もうちょっと噛み砕いて説明すると、3DCGでよく使われる「テクスチャ」はビットマップ画像ですので、このデモでは一切テクスチャマッピングが行われていない、つまり表示されているすべてのCGが「物理演算」で描画されていることを意味します。
次世代の据え置き型ゲーム機である「PS5」や「Project Scaalett(次世代XBox)」での対応が発表されているこのレイトレーシング技術。めちゃくちゃキレイでした!(語彙力) こちらもめちゃくちゃ専門的な内容だったので、改めてご紹介したいですね!
というわけで、怒涛の勢いで1日目が過ぎ去ってしまいました……。いやー、すごかった……。
とにかく参加者の皆さんの熱量がすごいですね! ありとあらゆる企業のみなさんがこぞって参加されていて、質問をする方の肩書も「えええ!」と驚くような一線クラスの方々ばかり。さすがは日本最高峰のコンピュータエンターテイメントのイベントなだけあります……!
本日はちょっと力負けしちゃった感がありますので(何に負けたんだ)、明日は! もっと現地でバンバン実況チックにお伝えしていきたいなと思います。明日は特にお世話になっているグリーさんのセッションが2つもありますので、そちらを重点的にご紹介できればと。
では、また明日に横浜でお会いしましょうー!